記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年12月21日

球界のバブルも崩壊:松井清員

 ノリことオリックスの中村紀洋内野手(33)が、来季の契約交渉で厳しい数字を突きつけられている。下交渉での球団提示額は1億2000万円減の8000万円。「年俸1億円以上は40%以内」と定められた野球協約の減額制限を大幅に超えた60%のダウンに「ショックで声にならないです」とうつむいた。

 85試合の出場で打率2割3分2厘、12本塁打、45打点。数字は物足りないが、両手首痛を耐えながら1年間戦ったことを思えば、ちょっと気の毒なダウン額だ。球界の慣例では故障で1年を棒に振ってもここまで下がることも珍しい。だが懐寂しい思いをしているのはノリだけではなかった。

 ヤクルト古田6000万円(2億4000万円から1億8000万円減、75%ダウン)

 巨人谷1億5000万円(2億8000万円から1億3000万円減、46%ダウン)

 横浜鈴木9000万円(2億2000万円から1億3000万円減、59%ダウン)

 それぞれパターンは違うが、1億円以上のダウン更改自体、95年オフのダイエー(現ソフトバンク)石毛が2億円から1億円にダウンして以来、11年ぶりのことだった。それが今年は保留中のノリも含めて4人もいる。1億円以下でも横浜仁志が9000万円減、巨人清水と横浜佐伯が8000万円減と、1年に1人いるかいないかだった8000万円以上の大減俸が、今年は7選手もいる。

 野球界に何が起こっているのか。ある球団首脳は「プロ野球にも本当の意味での能力給の時代が来たのではないか」と分析した。過去の更改を振り返った時、倍増、3倍増はあっても、これほど大きなダウン額はあまりなかった。プロ野球の年俸は「能力給」といわれるが、実態は上がりやすく、下がりにくい性質。シーズン成績に加えて、選手が積み重ねてきた「実績」が加味され、どちらかといえば選手に温かく有利な契約システムと言えた。

 一般社会のバブルは90年代初頭にはじけた。だがプロ野球界のバブルはその後も膨らみ続け、1億円が当たり前という年俸高騰時代がやってきた。「実績+能力」を兼ね備えた億万長者が急増し、06年度でも1億円以上が74人(外国人選手除く)もいる。だがここへきてプロ野球人気は頭打ち。収入源となる観客動員は伸び悩み、巨人戦の視聴率の低迷でセ・リーグ球団を中心に放送権収入も減っている。一方で外国人補強やFA選手の獲得・引き留め資金やドラフトに費用がかかり、球団経営は厳しい状況に追い込まれ、何かを切り詰めなければやっていけない非常事態に陥っている。

 選手サイドに立てばノリのように、昔ならあり得なかった大減俸を宣告された“ギャップ”を理解できず、のみ込めないのも当然だろう。それでも経営に必死の球団は過去の「実績」を顧みず、あくまで今季成績に表れた「能力」でビジネスライクに電卓をはじいているように映る。他球団でも今回の前例にならい、大減俸の選手は一層増えることになるだろう。とうとうプロ野球界のバブルも崩壊してしまったのか。実績ある7選手の大減俸が、その象徴に思えてならない。(金額は推定)

December 21, 2006 02:46 PM