記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年12月16日

答えはロンリーワン:藤中栄二

 以前から返答が難しいと思っている質問を受けた。旧知の後輩に、こう尋ねられた。

 後輩 どうしたらオリジナリティーを出せますか?

 頭の中に明確な解決法はない。大体、自分に「オリジナル」の何かがあるという認識も、自信もない。胸の内では「オレみたいな『色』のない人間に聞かないで」と嘆いたが、口から出たのは激励の言葉だった。

 自分 やりたいようにやれば、それがオリジナリティーだよ。

 後輩と別れた後、やはり軽はずみなアドバイスに反省した。自分の情けなさに怒りを感じた。

 社会人として駆け出しだった当時、自分も同じ悩みを先輩に打ち明けている。その時は、こうアドバイスされた。

 先輩 周囲にいる先輩のマネをしたり、観察するといいよ。

 当時は「なるほど」と納得したが、10年以上が経過した今、後輩に同じアドバイスはできない。他人から見習う部分は数多くある。しかし決定的に違う部分を感じる。当たり前のことだが、マネをしても、見習っても、決して同じ人間にはなれないという現実だ。

 今月2日のJリーグ浦和-G大阪戦を視察した鬼武チェアマンは言った。「レッズはJスタート時に『お荷物』と言われたが、努力すれば勝てるところをみせた。ただほかのクラブが同じことをしても意味がないし、見習っても仕方ない」。浦和には日本一のサポーターがいる。6万人収容のサッカー専用スタジアムがある。関東近県のクラブの中でも都内からのアクセスも良い方だ。他クラブがどんな努力をしても持てないベースがある。

 現在のJクラブ経営は入場料収入に頼っている。浦和とは違い、他クラブは集客に苦闘している。あるクラブ幹部は「地方クラブは他県のファンをスタジアムに集めないとスタンドが埋まらない。でも1度、足を遠ざけた県外のファンを呼び戻すのは難しい」とこぼす。新潟も多くの観客動員で注目されているが、当初はチケットを無料で配布していた。地元への地道な働きかけの成果が形になった。首都圏にある浦和とは違うアプローチでスタジアムを埋めている。同じようにどのクラブも企業努力はしているが、ベースが違えば方法も変えなければならない。

 ナンバーワンと同じで、オンリーワンになるのも簡単ではない。無理に奇をてらった、誰もがやっていないような行動が偶然、評価されることがある。その瞬間はうれしいが、その後は大変だ。次は前回以上の成果を挙げなければ満足できない。「らしくない」無理した行動を強いられる。再び「自分にはオリジナリティーが…」と頭を悩ませるだろう。

 独自性を打ち出すには、1人で考えるしかない。他人や周囲に流されず「これが自分の方法だ」と覚悟を決めた時、その人しか持っていない個性が生まれるだろう。独りよがりと言われるかもしれない。孤独感も味わう。だが、答えを出せる人間は自分1人だけだ。「ロンリーワン」になれた人だけが、自らのオリジナリティーをつかむのではないかと思う。

December 16, 2006 12:34 PM