2006年12月11日
清原の目からウロコ:松井清員
野球選手にとって「いい目」とはどんな目なのだろうか。視力2・0? 答えはNO。では動体視力2・0? これも答えはNO。オリックス清原が7日、大阪府吹田市の視覚情報センター(田村スポーツビジョン研究所)で行った“目ヂカラ養成トレーニング”に同行取材した私は、目からうろこの連続だった。特に「動体視力の数値」こそ野球センスの物差しと思っていた私に、同センターの田村知則代表は「動体視力が2・0でも、1軍に上がれない選球眼の悪い選手は数多くいます」と否定した。
正解は「正しい目の使い方」ができているかどうかだそうだ。打者は左右の両目でボールを見て、球種やコースを判別して打つ。だが、このとき、1つのボールを追いかける左と右の眼球の動きは同じではないという。左目と右目の誤差が大きい選手ほどピントがズレ、本来あるべきボールの場所と違う場所に「錯覚のボール」を見る。しかも加齢とともに目の筋力は弱まって「錯覚」は増幅し、とらえたと思ったボールを打ち損じたり、極端な場合はボール球もがストライクに見えたりするというのだ。
こうした両眼視機能が優れている選手ほど「錯覚」は少ない。その代表的選手がイチローだ。オリックス時代に同センターで四角い枠の上下、左右、斜めに書かれた1から30までの数字を順番に見る眼球運動検査を実施。するとほとんど顔を動かさず、一定した眼球の動きだけで的確に数字をとらえたという。同じ検査を1軍半の選手に実施したところ眼球は不規則に動き、顔も激しく動いて口は半開き。それは本人は無意識でも目でものをとらえることに苦労し、1軍に定着できない要素の1つではないかと田村代表は分析した。
これは打席でボールをとらえる時と同じ。目が正しく使えているイチローは顔が動かず、体の軸がブレないから難しい球にも対応できる。反対に目が正しく使えていない選手は、自然と顔を動かしてボールを追う分、軸がブレる。下半身も安定せず、本来そこにない「錯覚のボール」を打ちに行ってしまう。球の数ミリ上をたたくか、下をたたくかで本塁打かアウトか大違いの野球界。清原もうなっていたが、田村代表はもう1つ大事な要素を付け加えた。
「人間は打席で感情が入るほどボールを見過ぎる。その分、反応は0・1秒以上遅れる。プロではボールが捕手のミットに収まるまでが平均0・4秒だから、0・1秒がいかに大きな数字か。当然見過ぎると力も入って顔は動くし、軸もブレる。若い時はまだ対応できるけど年を取るほどやめた方がいいし、損でしょう」。
いかに適度な緊張と「平常心」で打席に立てるか。気合の入り過ぎはNG。「打席では絶対にカッカしたらダメなんですね」。これまで「僕は力んでナンボ」を自称してきた清原は、またうなりまくっていた。
スキルアップに大切なものは「正しい目の使い方」と「平常心」。特に前者は自宅でもできる「眼球運動トレーニング」などを継続すれば、矯正可能という。イチローはメジャーでもこのトレーニングを継続しているとか。清原も「一生懸命やります」と検査代込みの1万円で一式を買って帰った。もちろん“目ヂカラ”だけで6年連続200本安打は打てるものではない。だがイチローが世界のヒットマンたるゆえんを垣間見た気がした。
December 11, 2006 09:20 AM
