記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年12月08日

球界の底辺拡大急務:鳥谷越直子

 まだデビュー前のジャニーズJr.が、あの日本武道館でコンサートを開くという。チケットも順調にさばけているというから驚きだ。トシちゃん、マッチ、少年隊、SMAP、TOKIO、V6、嵐、KAT-TUN…。よくもまあ次々とトップアイドルを世に送り出すものだ。ジャニーズ恐るべし、である。

 さて、本題の野球の話。松坂、井川と日本球界の看板選手が大リーグと移籍交渉を進め、ファンの関心もまた海の向こうへ移りつつある。かつての「夢」が身近になり、日本の野球レベルの底上げに期待感がある一方、日本プロ野球の弱体化を危ぶむ声が高まっている。

 大物選手の海外流出が避けられなくなったここ数年、日本球界では「底辺拡大」のキーワードがクローズアップされている。

 今年5月に亡くなった前日本野球連盟会長の山本英一郎氏(享年87)はコーチのライセンス制を提唱していた。サッカーのように細分化した年代層に見合った指導者を養成、連盟に登録することで、一定の指導者水準を確保するのが狙いだ。

 山本氏が描いた青写真は日本代表監督を頂点とする「ピラミッド構想」。代表監督が招へいしたプロのコーチ陣が小、中、高、大学、U-25と各年代の日本代表を指導、育成プログラムを一本化するという案だ。「アメリカやキューバは一貫した指導方針があるから強い。日本も思い切った構造改革をしないと取り残される」と力説していた。

 組織が細かく分かれ、歴史もバラバラな日本球界の構造改革は一筋縄ではいかない。だが「底辺拡大が急務」という共通認識のもと、各組織が1歩1歩動き始めている。

 日本高野連は2年前から、中体連と連携を図り、資金面、技術面で中学の指導者育成を支援している。ここ数年の統計をみると、中学で約30万人を数える球児は、高校に入ると約15万人に半減する。中学時代に適切な指導を受けさせ、野球の真の魅力と正しい技術を身に付けさせることで、野球人口減少を食い止めようというものだ。

 巨人が今年4月に開校した子供向けの「ジャイアンツアカデミー」も注目されている。5歳から小学校6年生まで330人を対象に体づくりから基本技術、野球知識を独自の年齢別マニュアルに従い指導している。ジュニアからの一貫指導は、サッカークラブでは一般的だが日本のプロ球団としては初となる画期的な試みだ。巨人前スカウト部長の末次利光校長は「野球を通して子供たちの健全育成と野球界のすそ野の拡大が目的」と話す。併せて指導者育成も進めるという。

 大リーグへの選手流出、サッカー人気、子供の趣味の多様化などで日本のプロ球界は新たな局面を迎えている。ON人気にけん引され、黙っていてもスター選手が育ち、テレビの視聴率を稼げる時代は終わった。アマ世代から組織的かつ明確なビジョンを持ってスターを育てていく時代かもしれない。ジャニーズのような原石開拓と売り出しのノウハウが必要な気がするのは、私だけだろうか。

December 8, 2006 12:39 PM