記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年11月30日

心のケアが最も大事:村上秀明

 1人の高校生が天国に旅立った。北海道・白樺学園高アイスホッケー部の伏屋(ふせや)智史さん(享年18)が先日、帰らぬ人となった。5日に釧路での試合中にパックが首に当たり、意識不明の重体が続いていたが、意識が戻らないまま亡くなった。取材する側としても、あまりにも残念で、やりきれない事故だった。

 関係者によると、開始直後に痛ましい事故は起きた。相手チームの選手がシュートを放った際、DFの伏屋さんがゴール前で前のめりになったところ、左耳の下にパックが直撃したという。ヘルメットをかぶり、首に布製の防具(ネックガード)を付け、規定通りだったが、肌がわずかに露出した部分に当たったという。

 北海道連盟の関係者は「日本では過去に聞いたことがない」と顔をしかめた。伏屋さんは体を張った必死のプレーで失点を防ごうとした際、ヘルメットとネックガードのわずか数センチの部分に、約7・5センチの硬いゴム製のパックが当たってしまった。「確率的には万が一にも満たないような想定外」とあ然とした関係者もいた。一生懸命に戦った結果だと思うと、本当にやりきれない。

 同高は悲報から4日後、全国大会に出場。遺影とともに伏屋さんが事故当時着用していたユニホーム、スティックをベンチに入れて戦った。伏屋さんの両親から「辞退しないで息子の分も頑張ってほしい」との思いを託され、出場に踏み切った。さらにもう1つ、出場の理由があった。「(シュートを放った)相手チームのことを考えると出場した方がいい」(同校関係者)との判断だった。

 これを聞いた時、あらためて考えさせられた。シュートを放った高校生は、どんな思いをしているのだろうか。得点を奪おうと懸命にプレーしてシュートした結果が、偶然にも悲劇を生んでしまった。家族、関係者の気持ちを考えるといたたまれないが、一番やりきれない思いをしているのは、シュートを放った選手かもしれない。

 後日、対戦相手の学校関係者に話を聞いた。「(伏屋さんの)両親からの激励が大きくて、今は頑張るしかないという気持ちになっている」。シュートを放った選手は、クラブ活動を続けていると聞き、ひとまずはホッとした。そして、悲しみのどん底にいるはずの伏屋さんの両親の気配りに感動した。

 アイスホッケーは確かに体がぶつかり合うハードなスポーツといえる。ケガが絶えない競技かもしれないが、今回は誰が悪いというわけではない不慮の事故。当事者の心には一生残っていく出来事で、尊い命が失われてしまったが、シュートを放った選手は自分自身を責めないでほしいと思う。

 これからは、再発防止のための徹底的な安全管理はもちろんだが、シュートした選手をはじめ事故現場にいた選手たちの心のケアが最も大事だと思う。学校の垣根を越えた選手同士の励まし合いも必要だろう。ベッドの横にアイスホッケー関係の本を山積みにするほど競技を愛していた伏屋さんも、そう思っているような気がしてならない。ご冥福をお祈りしたい。

November 30, 2006 10:07 AM