2006年11月28日
ドラフト「原点」戻れ:鳥谷越直子
X大学監督「わざわざ遠い所まで、どうもどうも」。
Yスカウト「いいですね、Z選手。順位は確約できませんが、ドラフトでは指名させていただきます」。
X監督「そうですか。ただ、ほかにも複数球団から調査書がきてましてね」。
Yスカウト「まあお聞きください。うちの球団はホームグラウンド、合宿所、ファーム施設、育成プランなどが他球団よりだいぶ充実していまして」。
X監督「んで?」
Yスカウト「んで? と申しますと…。ああ、条件ですね。内々の話ですが、契約金○○、年俸○○を用意しています」。
X監督「んで?」
Yスカウト「ああ、それから、うちだけを『逆指名』していただければ、監督には○○をお支払い致します」。
◇ ◇
21日の大学・社会人ドラフト当日の明け方、こんな夢を見た。もちろん、そんな場面に遭遇したこともなければ、具体例を聞いたこともない。が、監督やスカウトの表情が妙にリアルで身震いした。
昨年から2年間、暫定導入された分離ドラフトでは希望枠(自由獲得枠は2人)が1人に減った。球団が確実に獲得できる選手は1人だけ、という制度だ。ところが、最近のドラフトは、下位指名選手まで球団の思惑通りに獲得できるケースが少なくない。
3巡目(大学・社会人2人目)以降は下位球団から指名するウエーバー方式。各球団とも運に身を任せる格好だが、内実は舞台裏の駆け引きが結果を導いている。希望枠と同様に事実上の「逆指名」がある。
ここ数年、3巡目以降の指名が濃厚な選手が「○○以外なら社会人に行きます」「○○以外ならチームに残留します」などとドラフト前に意思表示するケースが目立つ。意中の球団以外に指名を見送るようプレッシャーを掛けている。
2年前。一場(楽天)の金銭授受問題でオーナー3人が辞任し、裏金を一切禁止するためにドラフト制度を改正した。だが、現状は何も変わってない。あるスカウトは「希望枠」の概念が全選手に浸透していると指摘。「希望枠をなくし、完全ウエーバーにならない限り、裏金はなくならない」と制度の問題点を強調する。
豊富な資金にモノを言わせて「企業努力」するチームだけが次々に理想の補強を果たしている。球界発展に戦力均衡は欠かせないという考え方がドラフトの出発点のはず。だが、現状は球界全体の利益に逆行していると言わざるを得ない。
イチロー(マリナーズ)や清原(オリックス)も希望外の球団からスタートした。幼少からファンだった球団もあるだろう。本拠地の魅力やスカウトの熱意に引かれることもあるだろう。だが、プロで成功するかしないかは本人次第。どの球団でもチャンスに大差はない。
暫定導入を終えたドラフト制度は、来年以降へ向けて再改正の話し合いが始まる。プロもアマも原点に立ち返り、球界全体の利益を最優先すべきだ。「大リーグ至上」の流れが強まる中、その危機感が人気回復のカギを握ると思う。
November 28, 2006 12:09 PM
