記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年11月27日

ホラ大丈夫じゃ…ない:寺沢卓

 会社が築地にある。たまに早く終わると(それでも午後9時ごろだが)新橋まで歩いてみたりする。銀座のネオンの海を泳いでいると、クリスマスの電飾で彩られた街路樹の光がまぶしい。そんな時に限って「酔ってないよぉ、どぅあぃじょうび」と、ろれつの回らない声が耳に飛び込んでくる。いやいや、全然大丈夫じゃない。こんな状態で車のハンドルを握られたら交通事故は間違いない。

 これから忘年会シーズンになる。飲酒運転による事故の記事を書くことになるだろう、多分。何でそんな事故が起きるんだろうか? 酔っている人のほとんどは、こういう。「大丈夫」。その延長線上で無責任に車を運転してしまう。迷惑な話だ。

 シラフで酔った体験ができるグッズがある。プリズムに似た特殊なレンズをはめ込んだゴーグルだ。かけてみると目の前の世界がグニャグニャとゆがむ。社内でいすやごみ箱をジグザグに置き、試しに歩いてみると、足元がふらつき派手に転倒して腰を強打した。ゴーグルを外すと、すぐシラフに戻る。酒を飲んで車を運転しようとは絶対思えなくなる。

 栃木県警ではこのゴーグルを10組購入して、今月1日から運用を開始した。同県警交通企画課の弓田哲司課長補佐は「飲酒運転撲滅の講習で寸劇をやったこともあるが反応はイマイチ。ところがこのゴーグルだと飲酒状態の危険性をすぐに理解してもらえる。効果は抜群」と話す。同県警では、さらに12セット追加購入して県内全20署に配備した。山梨県交通安全協会でも購入しており「酒気帯びなどの免停講習などで使用したい」と話している。神奈川県警でも導入を真剣に考えているという。

 正式名称は「フェイタルビジョン」。米国製だ。日中用と暗く見える夜用のセットで5万円。安い買い物ではない。日本における輸入・販売総代理の権利を今年10月に得た東和医療器(東京都足立区)には連日購入希望の電話が鳴り響く。「11月から本格的に営業を始めましたが、すでに10件以上の成約を得た。問い合わせも1日20~30件。体験教育グッズを多く扱ってるが、こんなに反響が高いのは初めて」と中瀬一夫社長は驚いている。

 私も酒は好きだ。よく飲む。でも、運転だけはしない。事故を起こしたら家族に何と説明できるだろう。「大丈夫だった」なんて言えるわけはない。強打した腰の痛みは覚えておこう。飲んだときに思い出せるように。

November 27, 2006 02:29 PM