2006年11月24日
球界入札と官製談合:沢畠功二
最近、ニュース番組で見覚えのある顔をやたらと目にする。安藤忠恕(ただひろ)宮崎県知事だ。県の土木部職員が談合により逮捕され、自身にも捜査のメスが迫っている。巨人の宮崎キャンプを必ず訪れ、宮崎牛などを差し入れする。さぞかし巨人関係者も驚いているだろう。
一般に談合とは、公共事業などにおいて、複数の入札参加者が前もって相談し、入札価格や落札者などを協定しておくことをいう。投票箱のような「入札箱」に札を入れることから「入札」と呼ばれる。それにより工事を受注することを「落札」という。正直、ふだんは地方行政にはあまり関心を持たないが、入札という響きが妙に気になった。
球界でも今、入札が旬である。いわゆるポスティングシステムだ。西武松坂はレッドソックスが約60億円、ヤクルト岩村はデビルレイズが約5億円で、それぞれ交渉権を獲得。落札先が決まっている官製談合とは違って、さまざまな情報に振り回された。入札直後から球団数、金額などの情報、憶測が飛び交ったからだ。
入札前には「松坂はヤンキース有力」、いや「任天堂マネーでマリナーズが逆転を狙っている(直前で撤退)」などと言われていた。締め切り後は「落札したのは30億円以上でレンジャーズ」と外電がいち早く報じてきた。岩村もパドレス、インディアンスが有力だったが、ふたを開けたら違った。これが入札における本来の姿。かつてイチローや石井一がこの制度を行使した際は、不思議と予想された球団に落ち着いた。だから妙に新鮮だった。
落札球団が予想外なら、60億円という額にも驚いた。あまりに突出した額のため、妨害かと邪推したくもなるが…。それはともかく連日、ワイドショーでも取り上げられたことから、ご婦人方などにも関心の的となった。「60億円のうち、いくらが松坂に入るの?」と聞いてきた知人もいた。もちろん本人の懐には1円も入らない。交渉権を得るために、西武に60億円を払う。「赤字が年間20億円もあるなら球団はホクホクじゃない?」との指摘もあった。それも一理ある。しかし西武はチーム、いや日本の宝を失った。観客数、グッズ収入、そして何より戦力ダウンは計り知れない。赤字補てんで喜んでいる場合ではない。
制度が存続する限り、スターの流出は止まらない。米球界に詳しい関係者に、来年、再来年以降のメジャー予備軍数人を聞いた。空洞化は避けられない。1円にもならないFAで出られるなら、「売る」ことを選ぶ球団は少なくない。そして選手は骨をうずめるつもりで海を渡る。そうなると日本は米国に一流選手を供給するだけの構図が浮き彫りとなる。それがシステムとして成立してしまったがゆえの現状だ。
話は戻って、関与を否定している安藤知事は、来春の巨人キャンプを訪問できるだろうか。平安時代の仮名文「かたりあふ」に当てられたのが「談合」だったと言われている。福島、和歌山、宮崎と県政トップを巻き込んだ一連の事件。それを真に受けたかどうかは、知らない。
November 24, 2006 12:07 PM
