記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年11月20日

すっきりしない続投:村上秀明

 仮定の話だが、ある会社員が夢を追うため、同業種の別会社の面接に堂々と行ったとする。そして夢破れて再び会社に戻ってきたら、周囲の人間はどう感じるだろうか。「残念だったね」という同情、もしくは「また一緒に頑張ろう」という激励もあるだろう。その一方で、不快に思う人はいないだろうか。「今までと同じように一緒にやれるのか」と疑いの目を向ける人はいないだろうか。

 日本ハムの優勝パレードが18日、札幌市内で盛大に行われた。その中で笑顔を見せていたヒルマン監督が16日、来季の続投を表明した。メジャー監督就任の夢が消滅し「戻ってこられることをうれしく思う」と話し、来季は5年目の指揮を執ることになった。が、何かがすっきりとしない。特に日本ハムファンの中には、そう思った人も少なくないのではないだろうか。

 同監督は10月末に渡米し、大リーグ3球団の面談を受けた。レンジャーズは国際電話での面談でも可としていたが、ヒルマン監督自らが直接面談を希望し、夢に向かってトライした。日本ハム側も容認し、決して契約上のルールは犯していない。もちろん、夢に向かって行動することは素晴らしいし、そのチャンスをつかもうとする姿勢は共感できる。だが、今回の続投を素直に受け止めることができないでいる。

 プロの契約はビジネスである。FA移籍、トレードも当たり前のように行われる。そこに義理人情を入れてはいけないのかもしれないが、客観的に経緯をたどると「愛」を感じなかったからではないか。日本ハムが「最終手段」の扱いを受けた印象が強く、ビジネスライクな行動に映ったのが「しこり」の要因のような気がする。

 同時期に、FAでの去就が注目された広島の黒田博樹投手が残留を決意したのが、あまりにも対照的だったこともある。「育ててもらったカープ相手に目いっぱいボールを投げ込める自信がなかった」。広島ファンの大声援に心を揺さぶられ、義理人情を重視した形だろう。そもそも黒田と外国人監督を比べるのが、間違いかもしれない。大きく言うと、国民気質、文化の違いもあるだろうし…。

 特に北海道のファンがどう感じたかに不安を感じている。実際、野球好きの知人から「大リーグ監督がダメだからって、続投させるの」「シンジラレナ~イのは監督の行動じゃないの」と、数々の不快を表す声を聞いた。アジアシリーズVまで導いたヒルマン監督の行動を快く理解するファンもいるだろう。だが、一部かもしれないがすっきりしない気持ちのファンがいるのも事実だろう。

 チームは新庄の引退や主力選手の去就問題など、アジア王者になってから明るい話題が少ないが、経過はどうあれ、ヒルマン政権が再スタートする。ペナントを狙うための戦力補強も大事だが、わずかかもしれないが「溝」を少しでも早く埋める行動、発言をしてほしい。今日19日のファン感謝デーは、その第1歩になるのではないだろうか。

November 20, 2006 10:17 AM