2006年11月15日
馬本位の内規改正を:岡山俊明
オーストラリア最高のレース、メルボルンCで角居厩舎の2頭がワンツーを決めた。適距離を求めて豪州にターゲットを定めた角居勝彦調教師(42)の眼力には感服するほかない。
さぞや喜びに浸っているであろう調教師を栗東の厩舎に訪ねると、予想に反して硬い表情で頭を抱える姿があった。聞けば、勝ったデルタブルースのローテーションで悩みが生じたという。次走には12月10日に香港で行われる香港ヴァーズを予定していた。しかしJRAから競馬場での着地検査(海外遠征馬に義務付けられる3週間の検疫)が許可されず、次走の変更を余儀なくされた。「香港に使うのなら競馬場を貸さない。有馬記念なら貸す」。通告は断固としたものだった。
JRAの内規で、当該競馬場のレースに出走意思がなければ競馬場での検疫は認められない。拒否通告は規則にのっとったものなのだが、どうも合点がいかない。この内規によってベストのレース選択が阻害されたのは事実だからだ。
今回の勝利は世界の競馬地図における日本のステータスを高めた。父ダンスインザダークは豪州向きと認知されて産駒の評価は上がり、国際的な経済効果が期待される。功労馬に対して最善のサポートを行うのが主催者の責務ではないのだろうか。
「香港ならちょうどいい間隔で、強いトレーニングもしなくて済む。湿気のある馬場にも適性がある」。角居師が香港を望む理由は理路整然としている。あくまで香港にこだわるなら豪州から直接香港に入る手もあったが、その場合は海外滞在が60日を超えるため、帰国後の着地検査が3週間から3カ月に延びてしまう。トレーナーはしばらくレースに出られないリスクを避け、やむなく断念。有馬記念に向かわざるを得なくなった。
JRAとしては、香港に出走されては売り上げに結び付かないから、ぜひとも有馬記念に出てほしい。ディープインパクト、ハーツクライ、メイショウサムソンにデルタブルースが加われば、近年にない豪華メンバーがそろう。売り上げが低迷する中、世界で最も売れるドル箱レースで少しでも帳尻を合わせたいところだろう。それもよく分かるが、馬のためを考えればやはり疑問は残る。もし香港G1も勝つようなら種牡馬価値はさらに高まるのだから。
角居師はただでは引き下がらなかった。デルタブルースを有馬記念に使う条件として2着ポップロックの競馬場入厩を申し入れた。仲間がいれば調整しやすい。果たしてJRAは内規の特例を認めるのか。「認められない場合は有馬をやめて2頭とも放牧に出す」。
角居師は例えブラフでもポップロックを有馬記念に出す意思を示せば競馬場入厩は支障ないのに、真正面から立ち向かった。ディープインパクトが天皇賞(秋)に出走する、しないで騒動が起こったのも、この内規が一因。海外遠征馬が激増して今後も支障が予想される。馬本位の改正が求められている。
November 15, 2006 10:32 AM
