記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年11月14日

日米野球開催の意味:沢畠功二

 今回限りか、伝統継承か。先週まで開催されていた日米野球の存続が注目されている。労組プロ野球選手会は、今回限りでの打ち切りを強く要望。理由としては試合数増による選手への負担、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の開催により、真の世界一決定戦の場ができたことなどを挙げている。そんな空気が波及したのだろうか。全日本の辞退者は水面下での打診を含めると、25人にも上った。5戦全敗は当然の結果だった。

 「花相撲」と皮肉られての開催。それでも出場した選手は何かを吸収しようと必死だった。4日、ヤクルト青木宣親外野手(25)は神宮球場の東京6大学選抜戦から、東京ドームでの全米選抜戦にはしごした。3日の試合後、「明日デーゲームなんですよね」としかめっ面をしながらも「夜は途中出場? いえいえ、試合に出たいですからね」と手を抜こうとはしなかった。昼は東大生、夜はロックミュージシャンとしても活躍するアローヨ(レッズ)と対戦した。

 2年連続で年間190安打以上の快挙を達成しながらも、休もうとはしない。シーズン後半、足の痛みを隠して出場を続けた。その影響でオフはしばらく練習できなかったという。しかし何事もなかったように、フル出場した。

 メジャーでの1年目を終えたばかりのマリナーズ城島健司捕手(30)にも、貴重な機会だった。「日本に帰ってきてからは英語を聞くのもイヤでしたよ。それでもこの時期に英語に触れられるのはラッキーですよ。シーズンから1カ月あいているけど、思い出しますしね」。コミュニケーションを求められるポジションでの苦労は想像を絶する。できれば英語抜きで生活したかっただろうが、使わなければ忘れてしまうのが語学。感覚を取り戻すには、絶好の1週間だった。

 メジャーリーガーでは9年連続ゴールデングラブを獲得したA・ジョーンズ(ブレーブス)が、春から出場を直訴していた。1000万円を軽く超えるギャラ、家族同伴、観光旅行付き。大会MVPを獲得したハワード(フィリーズ)に至っては、今季の推定年俸(35万5000ドル=約4100万円)の約3分の1を、わずか5試合で稼いでしまった。さらに全勝分の賞金1億4000万円をチームで分配する。MLBサイドが続行を望むのも無理はない。

 全日本の出場手当ては全米選抜の10分の1にも満たないという。これではモチベーションを上げるのは難しい。選考のすったもんだに始まり、最悪の結果に終わった。親善試合を含めた全6試合の観客数は20万6310人。本場のプレーに満足する一方で、ふがいない全日本をどう思っただろうか。
 連日、試合前のベンチでは楽天担当記者たちにぼやきまくった野村監督。「互いに親善関係を深め、野球を世界に広め、野球人口を少しでも増やしたい。良いものを学ぶ場は大事。一流が一流を育てる」と開催を支持しながらも、こう続けたという。「ただ、こうも辞退者が多くては、もうやめた方がええんちゃうの」。次は2年後。どうなっているのだろうか。

November 14, 2006 10:31 AM