2006年11月09日
個性出る試合前練習:浜崎孝宏
来春センバツの参考資料となる秋季大会が、全国各地で終了した。春の甲子園に直結する大会とあって、取材に出向いた九州でも見応えある試合が続いたが、試合とは別の楽しみもあった。試合前練習だ。八重山商工は、シートノックで、選手が守備につく際とノックを終えてホーム付近に戻ってくる際の2度にわたり、ヘッドスライディングで始まりと終わりを締める。同校の伊志嶺吉盛監督(52)いわく「ヘッドスライディングはけがをしやすい。気合が入っていれば、けがをしにくいからね」と、意図を説明してくれた。
さらに宮崎県内有数の進学校・都城泉ケ丘の試合前練習も新鮮だった。シートノックに先立ち、投手がシャドーピッチングを行う。佐々木未応(みおう)監督(33)がバットを空振りした後は選手が勝手にイメージを膨らませて動く。「レフトオーバー!」。誰かの声が響き、全員がその打球に対応したプレーを行う。遊撃手は左翼手からの中継プレーに入り、投手は三塁ベース後方で三塁手のバックアップに入るという具合だ。「1球にこだわろう」が合言葉。進学校だけに平日の練習時間は約2時間だが、1球へのこだわりを取り入れたのが、選手の想像力をフル活用した“シミュレーション・ノック”なのだ。1球、それを行った後、通常のシートノックに移ったが、私にとっては斬新だった。試合前に“1球の仮想ノック”でイメージを高めるのはナインの決まり事だったのだ。
日常の決まりきった日課や仕事は、英語で「ルーティン」(routine)と呼ばれるが、実は野球と深いかかわりがありそうだ。「チームルーティン」「打席に入るまでのルーティン」という言葉を耳にする。チームルーティンとは、チーム全体で行動をともにすることで、プロ野球のキャンプで見られる朝の散歩などはその一例だ。
さらに、いい打者ほど打席に向かう際のしぐさ、動きが一定だ。例えば、マリナーズ・イチローは打席前にストレッチを行い、大きく素振りをしてから、打席内でバットを右手で縦に構え、投手に向けて差し出すおなじみのポーズを取る。じっくり観察すれば、打撃に移るまでのリズムが一定であるのが分かる。
どんな監督、選手でも試合前には「自分たちの野球をしたい」とコメントする。当然、野球は相手があってのスポーツで、敵も自分たちのリズムに持ち込もうとするだけに、思い通りにはいかない。お互いにリズムを崩されないよう、自分のリズムを生み出すためにチームや個人でルーティンを工夫している。
言われてみれば、簡単そうで、難しいのがマイペース。自分のリズムを変えないことだ。経験豊富なプロ選手と違って、甲子園などの大舞台に立てば、大観衆にのまれ、信じられないようなミスが起きるのが高校野球。九州大会で見た特長ある試合前練習は、大舞台での緊張緩和や自分たちのリズムを作り出そうという“儀式”。試合で勝った負けたもいいけど、試合前にはそのチームの意図する練習が反映されることが多い。試合前練習もまた面白い。
November 9, 2006 08:50 AM
