2006年10月30日
ちゃん+こ鍋の魅力:浜崎孝宏
鍋の季節がやってきた。11月に入れば福岡の街にも、季節の風物詩ともいえる大相撲九州場所が福岡市内で開催され、町のあちこちで力士を見掛けるようになる。相撲といえば、真っ先に想像してしまうのが、ちゃんこ鍋。鍋だけじゃなく、ハンバーガー、パスタなど業界内では食事全般のことを指す言葉だそうだ。
ちゃんこの言葉の由来は諸説あるようだが、かつて親のことを「ちゃん」と呼んだ時代があり、親同然でもある部屋の親方が子供同然の力士に鍋を食べさせることから「チャン+コ」と認識されているのが一般的。一説には、江戸時代初期に中国から長崎に伝わったごった煮風の中華鍋が、ちゃんこ鍋の始まりではないかという説もあるらしい。
ちゃんこ鍋が、具を入れて、煮たもので味にさほど変化はないと思ってらっしゃる人もいるでしょうが、部屋によって伝わる味付けはかなり違うようだ。例えば九重部屋では、塩ちゃんこで、煮込んだ野菜から出る水分も計算して味が薄まらないように塩を多めに入れたりと工夫がみられる。また、佐渡ケ嶽部屋は、みそちゃんこ。ほかにも、ちゃんこ鍋をもてなす料理店をのぞくと、カレーちゃんこ、しょうゆちゃんこ、などバラエティーに富んでいる。ダシが違えば、具材は似ていても味がこうも変わるものかと食べた経験のある人は感じるはずだ。
福岡市内にある元関取千代の海の岡部茂夫店長(61)に話を聞いたところ「番付が下のころは、兄弟子たちが食べ終えた鍋をのぞくと、雑炊もできないくらい何も残ってなくてね。最初に具がいっぱい入った鍋を食べてやろうと思ったもんだよ」と、ハングリー精神を培った現役時代を話してくれた。通常、各部屋では朝げいこの後、若手がつくったちゃんこ鍋を親方─関取と番付上位から順番に食べていくそうだ。
大柄なお相撲さんが、食する鍋だけにカロリーが高そうな気もするが、あるちゃんこ料理店の関係者は「ちゃんこ鍋は、カロリーもそんなに高くないし、健康食なんですよ。しっかりした食事をしないとけがをしやすくなるのではないでしょうか」と話した。言われてみれば、野菜、魚介類がたっぷり入った豪華版“みそ汁”なのだ。
弱い力士のままでは、いつまでたっても、鍋底をにらめっこ…。そんな屈辱から脱却するには強くなるしかないのだが、親方の経験を聞いたり、兄弟子からいろんな話を聞けたりと、輪の中ではハングリーさを養う“下克上鍋”に加えて“和”も生まれるような気がする。
同じ釜の飯を食べた間柄…と、親しい関係の人をそう表現することがあるが、顔をつき合わせて鍋を囲み、コトコトと煮立った具を箸(はし)でつつけば、自然とコミュニケーションが図れるというもの。
世間では痛ましい事件が起きているが、いかなる事件でも、コミュニケーション不足が、最悪のケースを招く要因の1つとなっているように思う。健康食で、お相撲さんの食べるちゃんこ鍋は、家族でも、仕事仲間でも、お互いの良さを再発見できる魅力があるように思うのですが。
October 30, 2006 11:18 AM
