2006年10月25日
入札が生む明暗:沢畠功二
毎オフ恒例と言っては何だが、ポスティングシステム(入札制度)を巡るメジャー移籍の動きが本格化してきた。19日にはヤクルト岩村明憲内野手(27)が球団の了承をもらい、4年間の主張がようやく通った。この制度では、容認するか否かの権利は球団にある。そのためにもめることが多いのだが、今回は至ってスムーズに進んだ。まれな例である。
第3者の勝手な見方だが、何が何でもメジャーに行くだろうな、と感じたシーンがあった。7月25日、いわき(福島)での横浜戦。3点リードの5回無死一、二塁、送りバントを命じられると、明らかに戸惑っていた。試合後、「サインか」と報道陣に聞かれると、「知るかっ、そんなものっ」と怒りをぶちまけた。
采配批判とも受け取られかねない言動。あえて記事にはしなかった。巨人、阪神のような人気球団にいたなら間違いなく、翌日には「監督批判」という見出しが紙面をにぎわせたことだろう。この件が去就に影響した可能性はゼロだろうが、チームに残ることはないなと確信した。
決まったからには、今後を温かく見守ろう。ヤクルト本社ロビーで晴れ晴れと会見する姿を見ながらそう思う一方で、目の当たりにしてきた過去の泥沼を思い出してしまう。巨人担当時代には上原、入来、昨オフはヤクルト石井弘。制度として認められながらも、1度の話し合いでまとまり、球団が「はい、分かりました」などと容認したケースはこれまであっただろうか。
球団間にある温度差。かつて巨人清武球団代表は「今の制度が続けば、日本のプロ野球の崩壊につながって、FA制度の形がい化につながっている」と話したことがある。一方でヤクルト多菊球団社長のように「夢を応援してあげたい」と理解を示すフロントもいる。球団内ですら、西武のように森(デビルレイズ)はオーケーだが、松坂はダメというケースも生じる。
FA制度がある中で、少しでも早く移籍しようと、入団から数年で行使を希望する選手は後を絶たない。球団には移籍金収入というビジネス的側面があるが、選手からすれば最高入札提示球団以外とは交渉できないなど移籍の自由に関する問題もある。ならば廃止して、FA取得までの年数を短縮すればいいのか。これにはドラフト改革、さらには球団経営も絡んでくるため、一筋縄ではいかない。そして何よりも、もめた後に残るのは選手のイメージの問題。仮にそれが第3者が介入していても、だ。
9月下旬、左肩手術を決断した石井弘と神宮クラブハウスで会った。現場の意向を受け入れる形で残留を選んだが、ここまで野球人生が変わるとは思わなかったろう。「1日も早く治るように…」としか声を掛けられなかった。今ごろメジャースカウトへ最後のアピールをしているはずだった。キャンプ直前まで交渉が続き、体のケア、練習に集中できなかったのではないだろうか。結果、WBC期間中に左肩を痛めてしまった。復帰は早くても、来季後半とみられている。ポスティングによる明と暗。切なくなった。
October 25, 2006 02:48 PM
