記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年10月17日

見えて冷めたブーム:藤中栄二

 コンビニエンスストアで「あの」光景を目撃することはなくなった。飲料水を冷やす冷蔵庫の扉を開けっ放しでおまけ付のペットボトルを購入する客とコンビニ店員の口論である。

 コンビニ店員「冷えなくなるので商品を選ぶのをご遠慮下さい。店長から言われていますので…」。

 購入客「商品を探しちゃいけないわけ? 長時間、扉を開けちゃダメだって書いてないでしょ!」。

 おまけシリーズを全部そろえるため、ペットボトルの上に付いた袋を手で触って中身を探る購入客。それをやんわりと断ろうとする店員…。こんなバトルに出くわしたころが懐かしい。

 ちょうど1年前のこと。05年10月、公正取引委員会(公取委)が「不当景品類及び不当表示防止法」に基づき、ドリンクキャンペーンに付くおまけに何が入っているのかを明記するよう飲料水メーカー側に注意を出した。それまでは、おまけは全商品に付いていれば景品とされ、最大で60種類ものおまけがあるシリーズも展開されるほどの人気があった。ここで公取委は数多くの商品を買っても全種類を集められるかどうかが運に左右されることを指摘。「消費者の射幸心をあおる」と景品ではなく、懸賞品と認定した。

 中身が分からなければ不当景品となる可能性が高まったため、飲料水メーカーも自主的に動いた。「ブラインド形式」のおまけ付き飲料水は昨年末までに店頭から消えてしまった。代わりにおまけの入った袋に中身が何かが明記されるか、あるいは袋が透明化される「オープン形式」へと移行していった。ちなみに約20年前にもロッテの「ビックリマンチョコ」が公取委で同じような注意を受けた過去がある。

 ブラインド形式だった当時、紹介されているおまけの全種類以外に「シークレット」と呼ばれる隠されたおまけが人気を集めた。しかしオープン形式となったことで「シークレット」の存在が自然消滅。大量におまけ付き飲料水を購入していく現象を「大人買い」と呼ぶ新たな言葉まで生まれたが、そんなコレクター客の心理をくすぐる販売戦略は崩れた。オープン形式の影響で販売量が伸び悩み、飲料水メーカーにとっては大打撃だったに違いない。

 小さいころ、ガチャガチャ(現在はガシャポンと呼ばれる)から何が出てくるのかワクワクした思い出を持つ人は少なくないだろう。現在もゲームセンターではUFOキャッチャーが流行している。景品のぬいぐるみ獲得に燃える人も多い。お金を支払ってでも、景品のぬいぐるみや欲しいガチャガチャのフィギュアを欲しい人もいるだろうが、大多数はギャンブル性を触発されて「はまった」のではないだろうか。

 1年前の公取委の注意を契機に、おまけ付き飲料水にはコレクター客の心理をくすぐるギャンブル性はなくなった。「中身が見えるからすぐに全部がそろうし、ありがたい」と思っているコレクター客は多くないだろう。一時は数百億円市場とも言われたおまけ付飲料水の人気。暑かった夏が終わるように、単なる一ブームとして忘れ去られようとしている。

October 17, 2006 02:49 PM