2006年10月06日
ロンシャンの革命を:岡山俊明
ディープインパクトが負けた翌日、寝込んだ。疲労がどっと出て、家から1歩も動けなかった。凱旋門賞の重みをずっしりと感じた。サッカー風になぞらえるならば、ロンシャンの落胆だ。
海外の競馬が地上波で生中継された例は、記憶する限り21年前にシンボリルドルフが力を発揮できずに終わった米国のサンルイレイS、シリウスシンボリが大敗した英国のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS以来。その時は世界との隔たりを痛感したが、大種牡馬サンデーサイレンスの出現で日本馬がここ10年ほどで飛躍的に強くなった実感があっただけに、その最高傑作の敗戦ショックは当時と比較にならない。98年を皮切りに日本調教馬の海外G1制覇は14を数えるのに、伝統ある英仏の2400メートルは遠い。
そんなに甘くないよ。戦前から、冷静な声は聞こえてきた。しかし、そういった一般論にディープインパクトを当てはめたくない気持ちが、心の中から敗戦の2文字を打ち消していた。競馬に携わる者としてまだまだ青い。でも、それでいいと思っている。夢は失わずにいたい。武田鉄矢も歌っている。信じられぬと嘆くよりも、信じて傷つく方がいい。
トップギアに入らなかったのはなぜだろう。慣れないスローペースで無駄に体力を消耗したのならば、ペースメーカーの馬を用意する周到さまで必要だったのか。勝ち馬の騎手はディープインパクトの直後で徹底的にマークしていた。3歳馬と3・5キロ差は最初から決まっていることだから敗因とするには違和感があるが、本命を背負ってアウエーで勝つのは本当に難しい。
どんなにいい競馬をしても、時がたてば勝ち馬以外は忘れられてしまう。皐月賞、ダービー、菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念と5つのG1を制したディープインパクトも、国際的にG1と認められているレースは宝塚記念だけで、その他はローカルG1でしかない。その宝塚記念にしても欧米の一線級は参加しないから、あまり認知されていない。ディープインパクトがいかに歴史的名馬であっても、世界に認められるには世界で勝たなければいけない。
池江泰郎調教師は一夜明けて「あきらめずに次に挑戦したい」と話した。既定路線と見られていた有馬記念での引退は、撤回される可能性が高くなった。このまま世界的な評価を得られないまま引退となれば、あまりにも惜しいと思っていたから、前向きな言葉は頼もしい。
長期遠征によって調教助手と厩務員が1頭にかかりきりになることで、残された厩舎スタッフの負担は増える。現役を続行して、もしも敗戦を重ねるようだと、種牡馬としての価値も下落するリスクを負う。もろもろの事情を承知の上で、勝手を言わせてもらう。オーナー、トレーナー、来年も行きましょう。フランスへ。ロンシャンの革命は、ディープインパクトにしかできません。
October 6, 2006 10:02 AM
