記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年09月02日

悔しさ見せんかい!!:松井清員

 盛り上がるパ・リーグのプレーオフ争いの陰で8月27日、オリックスが終戦を迎えた。残り試合に全勝しても上位3球団に届かない。プレーオフ進出が完全に絶たれ、昨年より1カ月も早く夢も希望もなくなった日本ハム戦の敗戦だった。試合後の重苦しい会見。中村監督は「ファンの方に申し訳ない」と寂しくわびた。それは今年オリックスを取材する機会が多い私にとっても、つらい瞬間だった。原稿を書き上げて出た札幌ドームの外は、もう秋の気配が漂う夕暮れ。言いようがなく切ない気分になって、いろんなことを思い返した。

 2月のキャンプは清原や中村の加入で大フィーバーした。開幕戦で西武に勝った時は、優勝原稿も用意しなくてはと思ったほどの勢いだった。だが、清原が4月下旬に死球を受けて欠場に追い込まれて以来、チームは暗転。中村、北川、阿部真、平野恵、川越、吉井、セラフィニと、これでもかこれでもかと主力に故障者が続出した。ここにデイビー以外の5助っ人の不振が追い打ちをかけ、あとはズルズル黒星街道。長期低迷のチームに戦力のハンディを挽回(ばんかい)する力は残っていなかった。いや、私にはその気力や意地のかけらすらないように映った。

 例えば敗戦後。ベンチから出てくる選手の中には笑みを浮かべている選手もいる。報道陣の前でバツの悪い照れもあろうが、負けてどうして笑っていられるのか…。その光景は一昔前、暗黒時代の阪神を見ているようだった。「弱いんだから負けても仕方ない」「この戦力なら善戦した方じゃないの」。ある阪神選手が当時、そう言っていた。根本にあるのは、どうせ勝てっこないというあきらめにも似た発想。いわゆる「負け犬根性」だった。長く低迷が続くと、マイナス思考が染みわたる。悲しいかな、今年で7年連続Bクラスが決まったオリックスにも、そんな空気がまん延している。

 薄い勝利への執念。そんなムードに危機感を抱いていたのが清原だった。「これからは目標のあるチームとないチームの差がはっきり出る。本当に心してかからんと、実力差以上の点差で負けることになる」。西武と巨人で天国と地獄を知る男は、後半戦を前にそう話していた。そして満身創痍(そうい)にもかかわらず40度近い酷暑の中で早出特打を行い、試合後は居残りスイング。だがその背中についていける選手がいなかった。それでも1人黙々と汗を流すパ・リーグ最年長の39歳。どうしてみんなもベストを尽くさないんだ。弱い時こそ練習しかないだろう? 清原の姿は寂しそうだった。

 1人が体を張っても、勝てるものではない。実際清原の心配通り、パ上位3強との対戦では淡泊な戦いぶりで完敗することが多い。1度こびりついた「負け犬根性」の払しょくは簡単ではないだろう。でもシーズンは残りあと1カ月、17試合もある。少なくともプロとして、負けて笑っている場合ではない。テレビで敗戦後のベンチが映った時、なぜかニヤけている選手の姿に一番悲しい思いをしているのはファンだ。我々報道陣に声を荒らげてもいい。無言でも取材拒否でもなんでもいい。とにかく負けたら、腹の底から悔しがらないことには、来年の成績も知れている。きっと天国の仰木さんも泣いている。このままでいいのか、オリックス!

September 2, 2006 09:20 AM