記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年08月29日

信じて花開くまで継続:寺沢卓

 本当の本物は必ず支持される。

 飛行機に乗ると、ある楽しみがある。81個の升目の中に無造作に1~9の数字が入っていたり、何も入っていないパズルだ。その空欄に1~9の数字を埋めていく。法則は縦横の1列でそれぞれ9個の升に1~9が1個ずつ入る。さらに9つある3×3の升にも1~9が1つずつ入る。縦、横、3×3で同じ数字がダブらないようにする。通称「数独」だ。

 機内冊子には、初心者用の簡単な問題が1つ、そしてやや難しめの問題も1つ。計2題を完全に解けたら「勝ち」と勝手にルールを決めている。国内便なので、所要時間は1時間前後。今までの戦績は4勝1敗。唯一の黒星では、残りあと4升の終盤で「6」が1列に2つ登場してきて、修正不可能になってさじを投げた。

 最近、この「数独」を日本に持ち込んだ人物を取材した。東京の下町でパズル雑誌の編集会社「ニコリ」を経営する鍜冶真起(かじ・まき)さん(54)だ。鍜冶さんが「数独」と名付けた。正式名称は「1ケタ数字が重複しない」という法則から「数字は独身に限る」である。

 海外では「SUDOKU」と書かれ「スドク」の「ス」にアクセントをつける。今年3月には、初の世界選手権がイタリアで開催された。

 世界約80カ国で発売されているが、やり方さえ理解できれば、数字は世界共通だから、難しい翻訳も不要だ。

 考案したのは米国人の建築家。鍜冶さんが84年に米国を訪れたときに、現地で購入したパズル雑誌の隅に掲載されていた。ナンバープレース。9×9の升目に挑戦して、面白さにハマったという。その年に発刊したパズ
ル雑誌に自作の数独を載せてみた。

 すると、読者から「私もつくった」とのメモとともにオリジナル問題が全国から殺到した。88年には数独の単行本も出版。固定ファンがついたが、爆発的なヒットには至らなかった。

 劇的な変化を迎えたのは21世紀に入ってから。ニュージーランド人の大ファンが、鍜冶さんの許可を得て、英紙タイムズに売り込み、04年11月から毎日問題が掲載された。英国中で話題となって日刊紙がこぞって掲載。その波が欧米に広がり、日本でも05年から注目され、今年はゲームソフトまで発売されるまでになった。
 世界的な人気となった理由について、鍜冶さんはこう考えている。「クロスワードは季節や時代の言葉を入れないと面白くない。でも数独は9つの数字だけだから20年前の問題も色あせない。問題の蓄積ができたから20年後のヒットで良かった。ただ、もうそろそろ過去の問題を全部使い切りそう。新作をどんどん作らないと」。

 最終的には信念。これはすごい-そう信じることが大事。たとえ世間に注目されなくても、何かが心に刺されば、それは本物。花開くまで継続していれば、それは失敗とはいわない。

August 29, 2006 12:15 PM