記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年08月26日

東京ダービーって?:沢畠功二

 野球ファンに「東京ダービー」って、ピンとくるだろうか。こないだろうなと思いながらも、つい考えてしまう。神宮球場でのヤクルト-巨人戦になると、やたら耳にするからだ。自分が競馬好きだからダービーという響きが、妙に気になるのも理由の1つだが…。

 先週末、神宮は阪神ファンで埋め尽くされた。2万7100、3万1600、2万6600人と、3日連続の大入り。平日だったため単純に比較はできないが9、10日の巨人戦は2万人すら満たなかった。巨人戦後に訪れた球場近くの日本料理店で、おかみさんが心配そうに問いかけてきた。「今日は巨人戦だったの? 最近は阪神戦の方が店に来るお客さんが多いのよねえ」。深夜11時すぎだったこともあるが、店内はふだんよりも静かだった。

 東京を本拠地とする球団同士の対決よりも、順位に関係なく応援する阪神ファン。東京のファンは優勝争いから脱落しようものなら、冷めてしまう。サッカーファンが言う。「東京ダービーって、FC東京と東京ヴェルディ戦でしょう。ヤクルト対巨人とは思わないよ」。浸透しないのも、無理はないか。

 そもそもダービーマッチとは? 英国中部の都市で、2つの教会区が町を二分し、フットボールの試合を行っていたことが語源とされている。同じ街をホームタウンとするが、階級、宗教など何らかの違いが生じたサポーター同士が、自分たちのクラブを熱狂的に応援する。セリエAではACミランとインテルが有名だ。

 やはり野球では根付かないのか。思い起こすのは90年代。野村ヤクルト、長嶋巨人は毎年のように優勝を争い、遺恨、因縁などと盛り上がった。FA、ドラフトなどで有力選手をかき集めた巨人に対し、ヤクルトは古田、池山ら生え抜きに加え、田畑、小早川、広田など他球団からのリストラ組を再生して、立ち向かった。必然的に盛り上がり、ファンも熱くなった。

 残念ながら、今は盛り上がりに欠けている。DJがマイクで「今日は東京ダービーです」と叫んでも、ファンは?? スポーツニュースでアナウンサーが「今日は東京ダービーが行われました」と切り出しても、これまた視聴者は?? これが現実だろう。

 ヤクルトの球団関係者の中にも「最近は横文字が多くて、分からないよ。だいたいダービーって野球に合うのか?」と苦笑いする者もいる。そしてこうも付け加えた。「やっぱり90年代みたいに両チームが優勝争いするようじゃないとダメ。あのころはとにかく球場はいっぱいだったよ」。異論はない。ここ3年、優勝争いは中日、阪神を軸に繰り広げられてきた。東京のチームは蚊帳の外。これではファン同士、盛り上がるはずがない。先日、SG決戦の前座として新曲を披露した「タッキー&翼」も、空席の目立つスタンドに驚いたのではなかろうか。

 すべてとは言わないが、両チームとも強くなければ、盛り上がるはずがない。若松前監督は「巨人に勝たないと上にいけない」とじゅ文のように繰り返していた。それほど現場には強烈な意識があった。今でもないわけがない。もっとも強い巨人があってこそ、ではあるが。

August 26, 2006 09:16 AM