記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年08月23日

ファンに説明責任を:松井清員

 ここへきてプロ野球審判団の不手際が頻発している。VTRなどで確認すれば、明らかな誤審も見受けられる。当事者の監督や選手、そしてファンにすれば納得しがたい「審判の権威」だろう。春先にもこのコラムで書いたが、今は映像技術が進歩し、判定の正誤が数十秒後に分かる時代。人間の肉眼だけに“正確なジャッジ”を頼ることは、もはや限界だろう。各球団もVTR導入を訴えて両リーグの実行委員会の議題とする構えだが、実現は早くても来年以降になりそうだ。

 ならば誤審問題とは別次元になるが、06年中の課題として審判団にお願いしたいことがある。それはグラウンドで起こったことに対し、しっかりファンに説明責任を果たすことだ。例えば7月5日の巨人-中日戦で落合監督が退場になった時のこと。審判の場内アナウンスは「遅延行為で退場処分にします」だけだった。落合監督はなにゆえ15分間も抗議し、何ゆえ退場なのか。東京ドームのファンは???だらけ。状況が理解できないまま、再開された試合を見るしかなかった。

 「小坂選手の中飛でタッチアップした二塁走者パウエル選手の離塁が捕球より早いと落合監督から抗議がありました。その際選手をベンチに引き揚げさせて抗議を続け、こちらはセ・リーグの申し合わせ事項(裁定に対する異議の禁止)に抵触すると警告しましたが、応じなかったため遅延行為で退場処分にしました」。

 これぐらいの説明があってもおかしくはない。ファンは高い入場料を払って試合を見に来ている。テレビを見ている分には解説者の推測、説明でおよその見当はつく。だが観客は審判のアナウンスしか事態を把握する方法がない。家に帰って深夜のスポーツ番組を見るか、翌朝の新聞を見て初めて「ああそうだったのか」と知るしかないのだ。

 一体だれのためのプロ野球なのか。審判団もその原点に立ち返れば、分かりやすく、丁寧な説明ができるはずだ。審判も当事者として頭に血が上っているのは分かる。興奮状態で言葉足らずになるのかも知れない。だが「審判の権威」を示すなら、そんな時こそ冷静な言葉でファンに伝える義務がある。

 1日の横浜-阪神戦で石井琢のファウルが暴投とみなされた時の説明では「4人の審判ともバットに当たったことが確認できなかった」。当然、当事者やファンからは「じゃあバットに当たってないことは確認できたのか」との反論が沸き起こるわけだ。

 中継しているNHKの再生映像を参考に取り入れている大相撲は、アナウンス用の「虎の巻」なるマニュアルがあるという。そこにはなぜ物言いがついたのか、どんな意見が出たのか、協議の結果どうする(取り直し、軍配通り、差し違え)かを明確、かつ適切にアナウンスする手順が明記されている。プロ野球の審判にもこの手のマニュアルはある。だがどれほど詳細で、徹底されているかは大きな疑問だ。今は誤審問題で手いっぱいかもしれない。だがファンが長年審判に抱く不満が、こんなところにもくすぶっていることを見逃してはいけない。

August 23, 2006 09:11 AM