記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年07月29日

有言実行が男の強さ:藤中栄二

 先日、プロ野球楽天の野村克也監督夫人、沙知代さんを取材する機会があった。対面するやいなや、注意を受けた。相手の返答をもらわないうちに思わず「はい」と口走る記者のクセを「話し方がなっていない」と厳しく指摘された。当然、この取材は序盤から逆風の展開になったことは言うまでもない。予想通り? の強烈な個性と主張、オーラに圧倒されてしまった。
 さらに、私が「長嶋さん、王さんが病魔に倒れられ、順番としてご主人の体調は大丈夫なんですか」と聞いた時には返す刀で「その順番が違うのよ」とピシャリ。4年前の自らの脱税事件を引き合いに出し「本当はうち、長嶋さん、王さんの順番でしょう。うちは体じゃなくてお金の方だったけど」。こちらがどんな顔をしていいのか、思わず反応に苦慮してしまうほど明るい口調で言われてしまった。最初から最後までサッチー節に翻弄(ほんろう)されっぱなしだった。
 強い沙知代さんだが、なぜか強くなりつつある女性像を嘆いていた。夫が育児休暇を取得し、妻が深夜まで働くような逆転現象は子育てに悪影響を及ぼすと危ぶむ言葉を続けた。「例えば夫が月30万円しか稼ぎがないからパートに出るのはいいでしょう。子供を学校に送り出し、帰宅するまで働くのはいいけど、子育てを放棄するのは最低ですよ。だったら最初から子供を産むなよと言いたい」。さらに、こう続けた。「母親が安心と安全を子供に与えないといけない。安住、安全、安心が失われている時代。子供には母親が必要。母を訪ねて三千里はあっても父を-はないでしょ」。
 働く妻を支えるために夫が家事をする。もはや、それが珍しくなくなった時代である。仕事も育児も料理も仕事も家事もできる男が格好いい、みたいな風潮さえある。仕事一筋で家事をしないなんて逆に時代遅れだといわれる世の中になってきた。それって夫=男性が弱くなったからである。では、男の強さとは? 沙知代さんは「自分が言ったことに追いつかないといけない。最近は『ほら吹き男爵症候群』という病気があるそうだけど、それではダメなのよ」と分析した。有言実行こそが男の強さを証明するということだった。
 そういえば…上司からの指示に対し、簡単に「はい」と答えている自分に気が付いた。しかし本当にその「はい」と言った通りに仕事をしているのだろうかと不安に思ってきた。自信がなければ「頑張ります」と言うにとどめ、あとは全力を尽くすしかない。「はい」と言ってできなければ有言不実行という烙印(らくいん)を押されることになる。難しいのは有言実行になっているかどうかを判断するのは、まずは自分自身であるということ。ジャッジするのが自分であればこそ「まあこの辺でいいか」と甘えが出てしまう。今は「はい」という一言の重さをひしひしと痛感している。
 そこで質問です。自分の胸に手を当てて振り返ってみてください。あなたは有言実行していますか?

July 29, 2006 08:57 AM