記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年07月25日

「相方」思い流した涙/村上久美子:村上久美子

 お笑いコンビ「極楽とんぼ」で活躍していた山本圭一(38)が、少女(17)に飲酒をさせ、みだらな行為をしたことを理由に、所属の吉本興業を解雇された。人気タレントの電撃解雇-。相方の加藤浩次(37)にとっても、寝耳に水の衝撃だった。

 山本が事件を起こしたのは、16日夜から17日未明にかけての間。吉本は18日午後9時すぎ、山本の解雇を発表した。相方の加藤に知らされたのも、同日夕だった。相方が起こした事件の詳細を聞かされると同時に、解雇の事実も知った。

 山本解雇の翌日、テレビ出演した加藤が涙を流して「気持ちの整理がつかない」と語ったことを、芸能人のウソ泣き、ととらえる声もあったが、あれは本物の悔し涙ではないかと思う。

 それから数日後、深夜ラジオに生出演した加藤は「会社は山本さんを解雇し、コンビ解散という人もいるけれど、解散を決めるのは2人の問題」「山本さんもやっちゃいけないことをやった。今は、どれだけの人に迷惑を掛けたか、しっかり受け止めて欲しい」。一方で「擁護していると言われるかもしれないけど、しっかり(罪を償い)反省して、いつかまた、山本さんとやれる日が来たら、と思う」とも語った。

 素直に、ありのままをさらけ出した言葉だったろう。山本と加藤は16年前、もう1人の友人とともに劇団で役者を目指していた。役者の卵だった3人は、大成の道を探り、加藤と山本が2人で劇団を飛び出し、お笑いの道へ入った。コンビの看板を二人三脚で築き上げてきた。

 そんな絆(きずな)があるのも事実。だが、きれい事だけではない現実もある。お笑い、漫才コンビにとって相方とは、兄弟でも恋人でも友人でもなく「自分の体の一部」だからだ。

 よく「コンビは普段、仲が良うないほど芸はおもろい」と言われるが、確かに、大阪で長く芸能担当をしてきた記者は、中田カウス・ボタン、オール阪神・巨人、コメディNO・1、西川のりお・上方よしおら今も活躍する多くのベテランコンビを見てきたが、ほとんど舞台後は別行動。各人とも、口をそろえて「好き嫌いちゃう。家族とか、守るもんでもない。飯食うていくための手段やねんから」。あくまでも、相方あってのコンビ。私たち、新聞記者で言えば、話を聞くための耳、理解する頭、記事を書く手…そんなところなんだろうと考えている。

 つまり、飛躍して考えれば、相方を思う気持ちは自己愛の一部だとも思う。板の上でネタを演じて初めて仕事が成立する漫才コンビと、相方以外の誰か、もしくは単独でも仕事ができるお笑いコンビでは、多少、相方の持つ重みも変わってくる。それでも、やっぱりこう思う-。加藤は特殊な形の自己愛から、テレビで情けない“自分”に悔し涙を流し、ラジオでは、事件は捜査中でなおかつ、会社が解雇という決断をしたにもかかわらず「またいつか」の発言につながったに違いない、と。

July 25, 2006 01:43 PM