2006年07月24日
球宴は1試合だけに:松井清員
今回の球宴取材で、ひそかな「マイ・スター」5人衆がいる。投手では剛球の松坂、ミスター完投の黒田。野手ではお祭り男の清原、そしてID野球の申し子・古田。もちろんド派手パフォーマンスの新庄も絶対に外せない。でも来年、このうち何人が同じ舞台に帰ってくるのだろう。22日、東京から大雨の宮崎へ移動した飛行機の中で、ちょっぴり感傷的になった。
今オフに松坂はポスティング、黒田はFAでメジャー挑戦がウワサされている。来年、清原は40歳、古田兼任監督は42歳を迎える。新庄に至っては今季限りの引退を宣言してしまった。人気と実力を兼ね備えたこの5人は、プロの中のプロと言える数少ない存在だと思う。でもきょう23日の球宴を最後に、2度と全員がそろうことはないかも知れない。上原にも大リーグへの夢があると聞く。来年と言わずとも、近未来の球宴はすごく寂しくなっている気がした。
いろんな意味で、日本の球宴はそのあり方を考える時期に来たと思う。ただでさえイチロー、ダブル松井、井口、城島ら球宴常連組のスターが海を渡って不在。おかげでメジャー熱の低かった数年前に比べドキドキ、ワクワクの夢対決は減った。そして日本のプロ野球自体、お客を呼べる個性的な選手が減っている現実もある。今年の球宴ですら、最初から最後までテレビにかじり付くファンはどれぐらいいるのだろう。
「球宴」。年々おもむきが薄れ、うたげの実態すら怪しくなってきた中で、やはり2試合開催は多すぎるのではないだろうか。メジャーは1試合。だがその分、ワールドシリーズに匹敵すると評されるほど権威も高い。選出選手数は30球団から64人で、日本は12球団から56人。メジャーは1球団平均2・1人だが、日本は4・7人が出る計算になる。日本は試合数が2倍ある分、疲労考慮などで選手数も増やさなければならない事情もあり、おのずと「選ばれる価値」も下がってしまっているのだ。
ある選手は「本当は後半に備えて体のケアもしたい時期。移動日なしの2連戦は疲れるし、ケガでもしたら大変」とこぼした。一方で「セとパの対戦は1カ月前に交流戦で見たばかりだし、真剣度では交流戦の方が上でしょう」といったファンの厳しい声も聞こえてくる。全員が全員ではないが、肝心の選手からもファンからも、心から楽しむ雰囲気が伝わって来ない。誰のための球宴なのかと、考えさせられてしまう。
1試合制に踏み切れない理由の1つに収入減がある。2試合なら入場料や放送権料だけで約10億円が日本野球機構に入る。その運営費や選手年金は球宴収入でまかなわれる。だが球宴の栄誉を希薄にし、ファンを失望させてしまっては本末転倒。選手が本当に選ばれる栄誉を実感し、その喜びを全力プレーでお返しする。これが真の球宴の姿ではないだろうか。
1試合制なら5億円の収入が減る-と門前払いしていては、何も進まない。1試合で価値を高め、その上で高い収益を得る方法を真剣に考えることが先決だと思う。一流選手のメジャー流出熱は当分冷めそうもない。個性的なスターにも必ず身を引く時が来る。「球宴」の名にふさわしい輝きを取り戻す努力は、早急に必要だ。
July 24, 2006 11:35 AM
