記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年07月23日

信念貫いた全国制覇:村上秀明

 毎年、夏が来ると謝らなければと思い出すことがある。高校野球の駒大苫小牧の選手たちがその相手だ。南北海道代表として昨夏の甲子園で連覇を果たし、今ではすっかり全国区の知名度を確立した。小倉(福岡)以来、57年ぶりの夏連覇は、個人的にはうれしさを通り越して信じられない心境だった。

 自分が高校野球を担当していた7~9年前は、駒大苫小牧が甲子園に出場することはなかった。洗練されたチームの印象はあったが、南北海道の予選で惜敗していた。ただ、当時の選手たちからも、この言葉をよく聞かされていた。今の選手たちが当然のように口にする「目標は全国制覇です」。

 95年に顧問として就任した香田誉士史監督の教えだったのだろうが、志は当時から本当に高かった。甲子園での上位進出すら珍しかった当時の北海道では、選手に目標を聞くと「甲子園出場」がほとんどだった。そんな中、間髪を入れず「全国制覇」と言ってのける野球部は、北海道では異色の存在だったと言える。

 ナインの意気込みを頼もしく感じる一方で、記者として全国レベルも目にしていただけに「そんなに簡単な世界じゃないよ」なんて心の中で意地悪なことを思っていたものだ。だが、選手こそ変わったが、04年夏には優勝旗が本当に津軽海峡を渡ってきた。「全国制覇」が現実になり、当時の部員の意気込みに冷めた感情を持っていた自分が恥ずかしくなった。

 05年優勝時には野球部長の暴力問題が発覚、3月には3年生部員の飲酒、喫煙が表ざたになり、快挙に水を差した形になったが、選手たちが甲子園で残した戦績が変わることはない。以前の北海道の選手では考えられなかったが、駒大苫小牧の選手が高校野球雑誌の表紙を飾るのも珍しくなくなった。何より北海道関係者の意識改革を果たした功績は大きい。

 揺るがない信念が大きかったのではと思っている。歴代の選手が「全国制覇」と言い続けてきた思いが引き継がれ、開花させたのだと思う。「雪国のハンディ」を覆し、北海道民にやればできるという勇気を与えてくれたが、それと同時に、個人的には信念を持った取り組みは必ず成就すると教えてもらった気がする(それだけに一連の不祥事は本当に残念だったが)。

 この人も信念を強く感じた選手の1人だ。スピードスケート女子短距離の第一人者、岡崎朋美(富士急)で「夢を現実に」を座右の銘として活躍を続けている。高校時代まではまったくの無名だったが、実業団入り後のたゆまぬ努力で花開いた選手の言葉だけに重みがある。「努力は必ず報われる」を実証し続けているアスリートだろう。

 会社に入ってから学ぶことは多いが、駒大苫小牧の「全国制覇の信念」は強いインパクトがあり、教訓として心に残っている。夏が来ると当時の選手への謝罪の念を覚えるとともにこう思う。何事にも信念を持って取り組まなければと。

July 23, 2006 11:35 AM