記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年07月08日

自分の意志を堂々と:千葉修宏

 7月4日は米国の独立記念日でした。ここニューヨークでも各地で式典や記念の花火大会などが開催され、盛り上がりました。僕は別に米市民ではありませんが、雰囲気を味わおうということで、近所でやっていた式典に参列し、夜は近くのハーバーで花火を見てきました。

 ジャズの生演奏や、間近で見る美しい花火など、家族全員が大満足の1日でした。ですが、それとは別に、僕は日米問わず、どうもこういう愛国心を喚起するようなイベントが苦手なんですよね。ひねくれ者なので「みんなで1つに」みたいなのが、もともと嫌いだというのもあるんですけど。

 大リーグ取材でも、最も違和感を感じるのが、あの「9・11」以降、行われるようになってきた「ゴッド・ブレス・アメリカ」の大合唱。多くの球団では日曜日の試合のみ、7回表終了時に行うのですが、ヤンキースは違います。毎試合、必ず行うので、困ってしまいます。

 まず「われわれの自由と生き方(our freedom and our way of life)を守るために命をささげた人たちのために歌いましょう」みたいなアナウンスが入り、歌が流れます。命をささげた人たちというのは、主にイラクで亡くなられた人たちを指しているのでしょう。

 僕は、自由や生活を守るのは本当に素晴らしいことだと思います。イラクで亡くなられた米国人の冥福を祈る気持ちだって強いです。ただ一方で、自分たちの生活を奪われた、イラクの民間人もいるということを考えると、ちょっと複雑な気持ちになります。「God bless America(米国に神のご加護を)」という曲名からして、「おいおい米国にだけかよ」と突っ込みたくなります。どうも自国のことばかり考えすぎのような気がするんですよね。

 僕が愛国心を喚起するようなイベントが苦手なもう1つの理由は、反対意見を持った人間を許さないような雰囲気があるからです。反対者がいないと、どんな考え方でも極端な方向に走りがちになります。「our freedom(われわれの自由)」を求める時に、「their freedom(彼らの自由)」のことを思い出させてくれるような反対意見を持った人たちがいることは、大事なことだと思うのですが。

 もちろんヤンキースタジアムで毎晩、老若男女が「ゴッド・ブレス・アメリカ」の大合唱を行っているからと言って、米国国民が全員、それを望んでいるということではありません。僕がアメリカについて「国際問題とかで、ある意味selfish(わがまま)だよね」と言うと、「その通りだよ」と同意してくれた米国人もいました。

 実は僕がコラムを担当するのは今回で最後となります。でもこれからも記者として、自分の正しいと思ったことは正々堂々と書いていきたいです。もちろん人の意見を聞く耳は持ちつつも、同調してくれる人が1人もいなくても、自分の意見を胸を張って言えるような記者になりたい。そんなことを強く思った独立記念日の夜でした。

July 8, 2006 10:32 AM