記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年06月29日

オシム監督発連鎖を:藤中栄二

 日本にJリーグが開幕した93年以降、サッカーW杯の優勝国と日本代表監督には偶然の「連鎖」がある。94年米国大会はブラジルが優勝したが、その直後、日本代表の監督には元ブラジル代表のロベルト・ファルカン氏が就任した。98年フランス大会でフランスが優勝すると、日本代表監督にはフィリップ・トルシエ氏が就いた。ブラジルが優勝した02年日韓大会もしかり。ジーコ監督が指揮を執った。日本サッカー協会はW杯期間前から代表監督の選考に動いており、単なる偶然が続いたと言っていい。しかし今回は4度目の偶然がなさそうだ。

 次期監督にはJ1千葉のイビチャ・オシム監督の就任が確実になった。オシム氏は旧ユーゴスラビア(ボスニア・ヘルツェゴビナ)出身。現在、ドイツで行われているW杯の決勝トーナメントどころか、出場32カ国にも入っていない。4度目の「連鎖」がなくなるであろうことが、心なしか寂しいと思う。ただオシム氏には心の底から日本代表の監督になって欲しいと思っている。90年イタリアW杯でユーゴスラビアを8強入りに導いた名将。欧州での実績も十分で、千葉で選手育成、チーム強化を証明しており、日本人のメンタリティーも熟知している。そして何と言っても現在65歳という高い年齢が好印象だ。

 現在、日本人は「高齢」という言葉に敏感に反応している。某生命保険会社は「50(歳)60(歳)、当たり前」というようなテレビCMを流し、高齢者を対象にした割安商品を展開する。最近、某コンビニチェーンは和菓子や白髪染めなど高齢者向けの商品を増やした新しいコンビニを出店することを発表した。煮物の和風弁当や日本茶などを扱い、店内にテーブルやマッサージチェアを用意し、飲食や会話を楽しめるスペースを設ける計画だという。20代、30代を対象としてきたコンビニが変わりつつある時代。53歳のジーコ監督よりも12歳も年上になるオシム氏は、今の日本社会を反映しているような監督とも見える。

 監督だけではない。選手にも同じことが言える。新しい若い選手が台頭してこなければ日本代表の未来はないが、今の代表の中心選手が4年後、さらにグレードアップして10年南アフリカW杯を目指して欲しい。小野、稲本、高原、中田浩ら黄金世代と言われる79年組は4年後、31歳になる。ドイツで学んだことを、次のW杯で生かすためにも彼らの経験が必ず必要になってくる。

 オシム監督が設定するスタミナと体力さえ若手と同じ、あるいは、それ以上であればいいだけだ。簡単に言えば動けるか、動けないか。心身ともに走ることさえ辞めなければいいのである。もし順調に10年南アフリカW杯まで指揮していれば、オシム監督は69歳になる。監督の高齢化が、選手にも「連鎖」反応することを希望したい。高齢化社会が叫ばれる日本のサッカー代表がベテランと言われる監督、選手が中心で戦っていてもおかしくはない。年齢通りに老け込む必要なんて全くないのだから。

June 29, 2006 11:44 AM