記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年06月25日

食べるなら自己責任:桐越聡

 果たして、どのぐらいまで安全だと確認できたら、再び米国産牛肉を食べたいという気分になるのだろうか。それとも恐怖が抜けなくて、このまま食べられなくなるのだろうか。米国産牛肉の輸入再開合意のニュースを見聞きして、そんなことを思った。

 日本政府は21日、米政府との間で米国産牛肉の輸入再開を合意した。これを受けて政府は米国の牛肉処理施設を事前調査するための専門家の調査団を24日に派遣すると発表した。約1カ月かけて35カ所の日本向け牛肉処理施設の安全管理態勢を調査。早ければ7月末にも米国産牛肉が日本の店頭に並ぶ見通しだ。

 取材を通じて知り合った精肉店に電話してみた。店頭で米国産牛肉を扱うことに慎重なご主人から、こんな答えが返ってきた。

 「『米国産牛肉は安全ですか』と聞かれたら『安全だよ、大丈夫だ』と答えるよ。検査がある程度ちゃんとしていれば、危ない牛肉が口に入る確率なんて、宝くじに当たるよりずっと低いぐらい。お客さんを不安にさせちゃいけないから売らないけど、家では食べるよ」。

 店頭には出さないけど家では食べると話すのを聞いて、はてと考えた。「宝くじに当たるよりずっと低いぐらい」なら米国産牛肉を食べてもいいのかもしれないなあ、と。

 ちょっと乱暴な言い方になるかも知れないが、口に入れるものすべてに何らかの危険性がある。それがどのぐらい危険かは別として、危険性がない食べ物なんてあり得ないんじゃないだろうか。無農薬野菜は高くて手が出ないから、値段の安い野菜を選ぶ。その野菜がどんな農薬を、どのぐらい浴びているかなんて消費者には正直、分からない。魚だって同じ。どこで捕れたか分かったとしても、その海の水質までは分からない。追及したらきりがない。

 牛肉にしたって国産やオーストラリア産牛肉が安全なんて言われているけど、「大丈夫だ」と、どこかで消費者本人が思い込むことによって買い、食べられているんだと思う。

 間違いなく米国人は米国産牛肉を食べているのだから、日本にだけ危険な牛肉を輸出しているわけではないだろう。回転ずしなんかにすごく抵抗を感じる米国人がいるように、要はその国にはその国の感じ方があるってことなんだろう、と思う。

 だからある意味では米国産牛肉を食べるのは自己責任なのかなあ、という気がする。外食していて知らないうちに口に入っていたというのは勘弁してほしいけど、それもある意味では自己責任かもしれない。以前は何だ日本政府の対応は、なんて頭にきていたけど、全頭検査を実施しても安全は絶対じゃない、と聞くと、すべての責任を政府にだけ押しつけるのはどうかなあという感じもしている。

 結局、どのぐらいなら安全と判断するかの基準を、自分なりに決めていくしかないんだろうと思っている。わが家の場合は牛肉を食べる回数は減らした。食べるとしても国産牛だけにした。野菜は近所に住んでいる農家の方から直接買うようにしている。それでいいんだと思っている。

June 25, 2006 10:54 AM