記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年05月31日

誰の(ための)会見?:小林千穂

 いろんな会見に行くと、たまに小さな紙を渡されることがある。主催者側が「出席者にこんな質問してみてください」と持ってくるのだ。映画の会見だったら「映画化のきっかけは何ですか」「撮影期間はいつですか」「来日した日本の印象はいかがですか」…。たいてい、基本的な質問が書かれている。

 何で質問を指定するわけ? これじゃあ会見じゃないじゃない? これくらいの質問だったら司会者が代表質問で聞いてもいいし、そうじゃなかったら、こんなことしなくても質問出るでしょう? という疑問符で頭がいっぱいになる。この「質問してしてシステム」について、主催者側関係者に聞いたことがある。「聞きたいことがあれば聞きますから」と。その人は「質問が少ないと、せっかく来てくれたのに申し訳ないので」という返事だった。「せっかく来てくれた人」は、壇上のスターさん、セレブさんのこと。主催者にとっては彼、彼女らに気分良く座っててもらいたい、これからもウチとお付き合い願いたい…そんな理由があるようだけど、そんなことは知ったこっちゃあない。そもそも、会見は誰のためのものなの? そのスターさん、セレブさんだけのためのものなの?

 ついこの間もある米女優の来日会見で、この小さな紙に遭遇した。主催者が会場で知り合いの記者を探して、紙を手渡していた。またしても「誰のための会見ですか」という疑問がムクムク。1枚は私の近くの人が受け取り、律義に「初めての日本の感想はいかがですか」と聞いていたが、本当にそれ、質問したかったことなんだろうか。それにその女優にとっても、もっと自由な質問を受けた方が楽しいんじゃないか。彼女はざっくばらんな感じで「何か聞きたいことないの?」なんて、一緒に壇上にいた関係者にマイクを向けていたくらいだったんだから。気を回しすぎてかえってつまらなくなってしまうことだってある。

 もう1つ、誰のためですかと思ったことは、土曜日恒例の映画初日舞台あいさつでのこと。最近は、テレビ局が映画製作に参加していることも多く、取材に行った話題作もその例に漏れない作品だった。司会はそのテレビ局の、バラエティーや情報番組でもよく顔を見る男性アナウンサー。彼の司会ぶりは、自分のためって感じでした。登壇者や客席の反応がちょっと悪かったり、少し遅れただけで「なーんの反応もありませんね」と、いちいちうるさい。登壇者がしゃべっているより、この男性アナウンサーの言葉の方が多いんじゃないかと思うくらいよくしゃべった。あなたの「名仕切り」ぶりを見せるためのイベントじゃないんですけど、ほんとに。

 -と、エラそうなことを書きましたが、私たちも「誰のためか」ということを忘れてはいけないわけでして。たまにこんな現場に出くわすと、反省したり足元を見つめ返したりするんです。

May 31, 2006 01:25 PM