2006年05月18日
松井ゆっくり“休んで”:千葉修宏
5月11日にヤンキースタジアムで行われたヤンキース対レッドソックス戦。初回の守備で、松井秀喜外野手(31)がスライディングキャッチを試みて、左手橈骨(とうこつ)を骨折しました。全治には早くて3カ月。シーズンを棒に振る可能性もあります。
ニューヨーク市内の病院へ向かう救急車に乗る時の松井選手の表情は、怒りに震えていました。まだ病院でエックス線検査をする前でしたが、強くかみしめた唇は、まっ白になっていました。長期休養を余儀なくされるほどのケガだということを悟っていたのでしょう。
松井選手の悔しさは計り知れません。そしてそれを考えると、僕も心にぽっかり穴があいた感じになっていきました。時間がたつにつれ、仕事をする気持ちにテンションを持っていくのが難しくなり、喪失感のようなものが心の中に膨らんでいきました。まぁ記者失格ですけどね。
僕は小学生のころ、何度か骨折をしたことがあります。アイススケートをしながら鬼ごっこをしていて転んだ時には、松井選手のように左手首を折りました。だから彼がケガをした瞬間、当時の痛みが頭の中によみがえってきました。
もちろん、その時の僕は松井選手のように最新、最高の医療で治療をしてもらったわけではありません。ですから一概に比較はできません。でも確実に左手は細くなり、握力も低下します。以前とは微妙に違った角度に曲がってしまった手首を見るにつけ、折れてしまったものを、全く同じように治すことの難しさを感じずにはいられません。
だからこそ個人的には、松井選手には完ぺきな状態に戻るまで、復帰を急いでほしくありません。阪神の金本選手は、同じようなケガをして半年はかかったといいます。松井選手本人は1日でも早くグラウンドに戻れることを望んでいるはずです。それはそうでしょう。彼は子供のころから今まで、ほとんど毎日(プロに入ってからは、多少のオフはあるでしょうが)、野球をやってきたのですから。トーリ監督も言っていたように、夏場に野球のない生活なんて想像できないのではないでしょうか。
でも、このケガは「この辺で少し休みなさい」という何かのお告げかもしれません。以前、「ロングバケーション」というドラマがあったことを覚えていますか。松井選手の気持ちを考えると、こんなことを言うのも失礼かと思いますが、あのドラマの主人公のように、人生のうち、少しくらい気持ちを張らずに生きていくのも、悪くはないと思います。
偉そうなことを言いますが、今回のことは野球に集中しないで周囲に耳を傾ける良いチャンスかもしれません。本を読み、音楽を聴き、さまざまなことからインスピレーションを得られるはずです。それは野球にだって大いに役立つのではないでしょうか。この休みをいろいろな意味で有効に使えれば、松井選手はひと回りもふた回りも大きくなって、帰ってきてくれると思います。
May 18, 2006 10:04 AM
