記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年05月16日

掛け声倒れが心配:桐越聡

 もうちょっと酒量を減らさないといけないかなあ…。厚生労働省が先週発表した「国民健康・栄養調査」の資料に目を通していて、そんな気分になった。

 発表によると「メタボリック症候群」の有病者は全国に1300万人、予備軍は1400万人と推計されるのだという。40~74歳の男性2人に1人、女性の5人に1人が、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病になる危険性が高いという。

 「メタボリック症候群」という言葉は聞いたことがあったけど、正直、勉強不足でどんな意味があるんだっけ、というぐらいの認識しかなかった。調べると、内臓に脂肪がたまって、高血圧や高血糖、高脂血症などを重複して発症していることをいうらしい。

 そのままほっておくと危ないということは素人でも分かる。厚労省は「適度な運動とバランスのよい食事と禁煙が大切だ」なんて強調していたけど、そんなことは前から言われていたことじゃないの? 今さら何を言っているの? 目新しい横文字の用語を使って国民の不安をあおっているだけじゃないの? と思ってしまった。

 僕自身、何年か前から締まりのない「ビール腹」になっているし、受診した会社の健康診断で高脂血症と判定されたこともある。「メタボリック症候群」はひとごとではない。気を付けなければいけないなあ、と思う。しかし、新聞記者の生活は規則正しくなんかない。規則正しくないから、運動と呼べるほどの運動はできない。張り込み中はおなかがすいても、コンビニのおにぎりをほお張れればいいぐらい。おなかがへりすぎて、夜遅くにドカ食いすることなんてしょっちゅうある。しかしそれは、自己責任だと思っている。

 厚労省はあれこれと作戦を打ち出しているけど本当に生活習慣病を減らしていけるのかなあと疑いの目を向けたくなる。年間30兆円を超えている国民医療費を何とか削減したくて、そのためには生活習慣病を予防しなければならないと理屈では分かるけど、掛け声倒れにはならないでしょうね、と言いたくもなる。

 「メタボリック症候群」に関する調査結果が発表されたその日、実は厚労省では職員を対象にした「階段利用キャンペーン」が始まっていた。生活習慣病にならないために適度な運動をしよう。数階なら階段を使って移動しましょう。そういう運動だ。

 素直に「いい取り組みじゃない?」と感心して、1階から26階の最上階まで薄暗い階段を歩いてみた。スーツのまま汗だくになって8分36秒かけて上り切った。しかし、その間にすれ違った人は6人だけ。初日とはいえ、ちょっと少なすぎないかなあと思った。

 生活習慣病を減らそうとしている厚労省の役人がこれじゃあ、なあ。「メタボリック症候群」に着目して健康診断を見直すとか、「メタボリック症候群」が疑われるような人には食事教室を開くとか、いろいろと作戦を練っているようだけど、いい年した大人にあれこれ掛け声を掛けたって、どれぐらいの人が実践するだろうか。そもそも、そこまでしなければいけないものなのかなあ。

May 16, 2006 10:29 AM