記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年05月11日

パターン慣れを反省:小林千穂

 最近は、映画など製作発表「会見」と銘打ったものでも、質疑応答は一切なく、キャストらのあいさつと簡単な一言で終わる場合も少なくない。何のための会見なのかよく分からないで帰ってくることもしばしばだ。かといって、質疑応答があっても、こちらがパターンから抜け出せない質問をして、ハイ時間切れとなって、がっくし帰ってくることもある。

 そんなことを思っていた最近、反省させられたことがあった。山田洋次監督の45年間を見せる展覧会に行った時のことだ。オープンのテープカットのあと、新作「武士の一分」に出演している檀れいと山田監督が一般の人を前にトークショーを行った。その前に報道陣は「囲み取材」と呼ばれる、まあミニインタビューのようなものをしているので、目新しい話は出てこないかなと思って聞いていた。すると女性が「檀れいさんのことを今日初めて知ったんですが、檀ふみさんのご親せきですか」と聞いた。おいおい、檀れいは宝塚出身の娘役トップで、昨年退団した女優だよと知っているので「『檀』は芸名なんだから関係あるわけないじゃない~」と苦笑し、会場からもそういうニュアンスの笑いが漏れた。しかし、檀はこう答えた。「檀ふみさんとは関係ありませんが、檀という字は『まゆみ』とも読めまして。私の本名はまゆみというので、檀という文字を使いました」。ほほぉ。宝塚出身の女優が自ら本名を名乗ることは少ない。思いがけない質問から、へぇが出てきた。パターンを外れることも面白いもんだなと、初心に帰らされた。

 こんなこともあった。先日、先輩記者が、人気モデルのエビちゃんこと蛯原友里のインタビューに出掛けようとした時のこと。子供に「エビちゃんにインタビューするんだよ」と言ったら「エビちゃんってエビ好きなのかな」と聞かれたそうだ。その先輩「それは面白い、聞いておこう」と思ったそうで、ちゃんと質問していた、「エビは好きですか」と。エビちゃんは「エビも好きですが、宮崎の実家から送られてくるお米が大好き」と答え、しっかり原稿に生かされている。もし「嫌いだったんですけど、えびバーガーのCMやって好きになりました」なんて言ってたら、マクドナルドも大喜びだっただろうな。パターンにはまっていると、いい意味での「くだらない質問」ができなくなってしまうもんだと、これまた反省したのでした。

 もう1つ。若年性認知症を描いた映画「明日の記憶」の「座談会」を取材した。主演の渡辺謙が原作にほれ込んでプロデューサーも務めた作品なので、とにかくこの作品の良さを伝えたいと、会見形式ではなく、渡辺が司会をして共演者や記者と話をしていった。キャストや監督が、観客から質問を受けたりする「ティーチイン」スタイルだ。ざっくばらんな場を設けてくれたのは貴重だったが、座談会がマスコミ向けだったことが残念だった。渡辺は全国で「ティーチイン」をしたり、医療関係者向けの講演会にも出席しているので、今回はマスコミにという趣旨だったのだろうが、少しでも一般の人を入れてほしかったな。私たちの固いアタマからは出てこない変化球が見たかった。

May 11, 2006 09:42 AM