記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年05月07日

勝利信じて楽しもう:荻島弘一

 「日本は決勝トーナメントに行けるんだろ?」。W杯開幕まで1カ月。この時期になると、友人との酒席の話題は日本代表の成績についてになる。「難しいかもよ」と答えると、友人の顔が上気する。「何で。オーストラリアとクロアチアには勝てるだろう」。そして「じゃあ、日本の1次リーグ突破の可能性は何%だよ」。こうなると、仕方がない。「35%かな」と答えて、理由を説明した。

 初出場した98年のフランス大会、日本は1次リーグで敗退した。02年日韓大会では、初めて決勝トーナメントに進出した。次は「ベスト8」という気持ちも分からないではない。日本協会も「準々決勝進出」を1つの目標にしている。しかし、当たり前のことだけれど簡単なことではない。

 前回、日本は1次リーグでシードされている。実力とは関係なく、ホスト国だったからだ。同組になったのはベルギー、ロシア、チュニジア。ドイツ大会はブラジル、クロアチア、オーストラリアだから、明らかに対戦相手は厳しい。

 まず、ブラジルの優位は動かない。サッカーは何が起こるか分からないと言っても、今回のブラジルは特別。3連勝するかどうかは別にしても、1次リーグ突破はかなりの確率だろう。仮に95%とすれば、残る105%(上位2チームが進出するから)を残りの3カ国で分けることになる。

 「クロアチア、日本、オーストラリアの順番」とか「オーストラリアが強い」とか「やっぱり日本が上」とか、予想は噴出する。つまり、3カ国には決定的な差がないということだ。いや、実際には差があるのだろうが、現時点でそれを考えるのは難しい。あと1カ月でチーム状況は大きく変わる。ケガ人も出るだろうし、コンディションの問題もある。今のところは、横一線と見るのが妥当だ。

 となると、組み合わせも関係する。「ブラジルと最後に当たるのは有利」という考えもある。確かに、ブラジルが突破を決めていればメンバーを落とす可能性もあるが、層の厚さから逆に控えが怖い。3カ国の争いと考えるのは、ほかも同じだから、初戦のオーストラリアも2戦目のクロアチアも日本に照準を合わせてくるはず。見方によっては難しい組み合わせなのだ。

 105%を3で割って35%。これが、最も現実的な1次リーグ突破の確率だろう。これを本番までの1カ月でどこまで上げていけるか。実際には、勝敗は何が起こるか分からない。試合展開は予想できても、勝敗は運も関係する。圧倒的に攻めながら負けることもある。だいたい予想が当たるなら、今ごろトトで大金持ちになっている。

 ここまで話すと、友人は「つまらないヤツだな」と吐き捨てた。「勝てると思わなきゃダメ。ジーコや選手を信じなきゃ」と。確かに、それも当たっている。新聞では、締め切りの関係上、常に勝ち負けの両方を考えて作業を進める。だから、そういう見方になったのか。世界中のファンが母国の勝利を信じて声援を送るのがW杯。そういう感情移入ができるからこそ、W杯は楽しい。冷静に見る目も大切だけれど、それだけでは、本当のW杯の楽しみの半分を放棄したようなものかもしれない。

May 7, 2006 10:50 AM