2006年04月29日
「棋士回生」の一手を:岡山俊明
毎週日曜午前に放送される将棋のNHK杯を必ず録画して楽しみに見ている。プロ棋士といえども秒読みに追われて2歩の反則を犯したり、時間切れで負けてしまうハプニングもまれにあって、人間臭さあふれる勝負を堪能できる。
昔から不思議に感じていたのは対局後の感想戦(対戦者同士で指し手の善悪を検証する作業)の様子。負けた棋士はショックや後悔や反省で気分は沈む。これはほかのスポーツでも似たようなものだろう。勝者も敗者に配慮して発言を慎むから、両者のやりとりはどうしてもボソボソと聞き取りづらくなりがち。何を言っているのか皆目分からない場合は、視聴者は蚊帳の外に置かれる。テレビ放送としては不親切な光景が何十年も繰り返されてきた。棋士たちは普段から本当にファンを大切にしているが、感想戦だけは自分の世界に入り込んでしまう。放送でなければ全く問題ないのだが。
ところが17日に放送された一戦は趣が違った。敗れた木村一基7段(32)の姿勢はあっぱれだった。対局後すぐに気持ちを切り替え、感想戦では視聴者に向けて語りかけるように話した。はきはきと丁寧に自分の手を解説し、惜しげもなく読み筋を披露した。明らかに視聴者を意識していた。「これを(テレビで)流されるのはつらいですね」と自嘲(じちょう)するほど完敗の内容だったのに、なかなかできることではない。お茶の間のファンに対する真摯(しんし)な気持ちが伝わってきた。竜王戦7番勝負で渡辺竜王に挑んだ時も、負けた直後に大盤解説場に姿を現して驚かされた。2日間にわたる激闘で疲れ果てていたはずなのに、髪を乱したまま余った放送時間を埋めた。タイトル戦挑戦者による即席解説など極めて異例。感服した。
テレビの感想戦は対局場から離れて大盤を使用し、カメラに向かって話すようにすれば、見る側との一体感も生まれると思うが、どうだろう。
日本将棋連盟の発表で1500万人とされる将棋人口は、年々減っていると聞く。羽生善治の7冠に沸いた96年に10億円を超えた連盟の収益は、6億円台まで落ち込んだ。7冠フィーバーや将棋を題材にしたNHK朝の連ドラ「ふたりっ子」の話題を、継続的な人気に結び付けられなかった。アマからプロに転身して話題をさらった瀬川晶司4段効果も、一過性で終わってはもったいない。
将棋界には素晴らしいタレントがたくさんいる。日本一将棋の強い歌手と呼ばれる内藤国雄9段は解説も名調子。ギャグ連発の福崎文吾9段、軽妙なエッセーで人気の先崎学8段、プロのお笑いも真っ青の神吉宏充6段(ショッキングピンクのスーツは必見)、イケメン山崎隆之6段…。慢性的な赤字経営に陥っている連盟は、もっと棋士のメディアへの露出を考えてもいい。バラエティー番組にも売り込んでほしい。それもファンサービスだし、ファン拡大やイメージアップにつながると思う。
April 29, 2006 11:45 AM
