2006年04月26日
2億円超補選の価値:桐越聡
「ちょっと、お兄さん。あなた、新聞記者さん?」。
先週のある日。衆院千葉7区補選の取材中に「言いたいことがあるの」と50歳代ぐらいの女性に呼び止められた。「頭にくるの、こういう補欠選挙。選挙違反がなかったら、やっていなかったのよ。選挙に使われる税金、いくらぐらいになるか知ってる?」。
もちろん税金が使われているのは知っているが、金額までは調べていなかった。「1億円以上は間違いないと思いますけど…」。あいまいな返答をするとズバッと言い返された。「記者ならね、そういうところに目を付けてもらわないと。こんな選挙に国民の税金がたくさん使われているのよ」。
あまりの迫力に押されて? 翌日、千葉県選挙管理委員会に確認した。「国から約2億3000万円が交付されます。投票所を設置する各市町村に合計約1億7000万円、投票用紙や選挙公報を印刷する、県が使うのは約6000万円になります」。明らかに「そのぐらいなら、まあ、仕方ないか」と思えるような金額ではない。
今回の補選は、総選挙以上に興味深い選挙だったのではないだろうか。選挙区内の争いというよりは「小泉改革継続の自民党」対「小沢代表率いる民主党」という、分かりやすい対立の構図が見えた。総選挙並みの総力戦も繰り広げられていた。
しかし、もとを正せば自民党前職の関係者が公職選挙法違反に問われる罪を犯した。それがなければ補選はない。補選がなければ、2億円以上の税金が投入されることもなかった。庶民が一生懸命働いて納めた税金が、このように使われるのは正直、腹立たしい。冒頭の女性が言うように「頭にくる」という感情は、むしろ当然のことかもしれない。
「送金指示」メール問題で永田寿康氏が議員辞職に追い込まれたのは記憶に新しいところだ。同氏は比例代表選出の国会議員だったから補選にはならないが、調べてみると01~05年に全国の22選挙区で補選が行われていた。議員が亡くなったり、知事選に立候補したり、11選挙区にはやむを得ない理由があったと思う。しかし、残り半分は、関係者が選挙違反をしたり、本人がウソの学歴を公表したり、秘書の給与を流用したりして議員辞職したことによる補選だった。選挙区の有権者数によって多少の違いはあるが、2億3000万円×11=25億3000万円。5年間で25億円ぐらいの税金が補選で無駄遣いされた、と言っても過言ではない。
こんなくだらない理由によって補選が行われる場合には、投入される税金分の金額を、辞職した議員に請求するような罰則が設けられてもいいのではないだろうか。国民の期待を裏切る議員辞職は、それほど重く罪なことのような気がしている。
今回も税金が無駄遣いされることによって選挙が行われた。しかし、もしかしたら、ここから政治の流れが大きく変わっていくかも知れないと感じさせるような結果になった。そういう意味では、わずか1議席を決める、たかが補選だったが、されど補選だなあ、とも思っている。
April 26, 2006 12:52 PM
