記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年04月23日

日本の温泉は最高:浜崎孝宏

 目まぐるしく色の変わる電光看板を上空から目にし、九州の地・福岡に戻ってきたことを実感させられた。2カ月ぶりの帰国。取材先だった天候不順の米シアトル同様、福岡空港で出迎えてくれたのは雨だった。福岡を飛び立ったのはバレンタインデー前のこと。乗り込んだタクシー運転手は「桜の時期は過ぎましたけど、しかし、最近のホークスは、やお、いかんですたい(うまくいかない)」とポツリ。窓外のぬれた桜の木も寂しげだったが、カーラジオから流れるホークスの苦戦中継に運転手の背中もどこか寂しげだった。プロ野球が真っ先に話題となったのが日本らしかった。

 約1週間、会社から休みをもらった。真っ先にやりたかったことがあった。温泉につかることだ。習慣というのは恐ろしい。鹿児島出身の私は、幼いころから入浴料300円台で県内の至るところの温泉に入ってきた。「疲れたら温泉」という行動は、鹿児島県人にとっては当たり前のことだと思われてならない。米国でジャグジーはあったものの、水道水を温めただけでは物足りない。大浴場で頭にタオルをのせ「は~っ」と深呼吸するのが温泉の最高のぜい沢だと思う。

 行き先は、鹿児島と宮崎の県境に位置する霧島温泉にした。約140年前に坂本竜馬と妻おりょうが、日本で最初に新婚旅行をした場所といわれ、00年度に環境省が出した温泉統計書によると全国温泉地別の源泉総数で、霧島温泉郷は全国8位(ちなみに1位は大分・別府温泉郷)の名門。高千穂の山あいの新緑から、もうもう立ち上る湯煙とともに、ゆで卵にも似た独特の硫黄臭が鼻をつく。これぞ、日本の温泉という九州を代表する温泉地で、新緑もまぶしかった。

 新婚旅行ではなかったものの、私の60日間の出張中、何かと気苦労もあった? 妻が「(私の)顔を見るとムカツク」と言うので、彼女の慰労も兼ねた。お世話になった宿は「硫黄谷温泉霧島ホテル」。竜馬夫妻が同ホテルの前身、霧島館時代に宿泊したこともある老舗で、館内には竜馬が新婚旅行を楽しんでいる内容を姉に向けて送った手紙などがあった。1866年、京都・寺田屋事件で切り傷を負った竜馬が、湯治をかねてこの地を訪れ、約20日間かけて湯巡りを楽しんだ様子がうかがえた。

 泉質も多彩だ。乳白色の硫黄泉、ミョウバン泉、塩類泉、鉄泉などある。温泉効果については個人差があるため何とも言えないが、地元では、アトピー性皮膚炎、糖尿、ぜんそく、痛風など現代病を含めたさまざまな症状に合わせ、よく効く評判の温泉が点在しているようだ。

 ニニギノミコトが地上に舞い降りたという「天孫降臨」伝説が残る霧島は、表現しがたいが、何か神秘的な雰囲気が充満している。九州には大分・湯布院、別府、熊本・黒川など温泉王国だが、日本で人気温泉地に共通しているのは、温泉プラス、自然のマイナスイオンを体いっぱい感じられる点だろう。妻の機嫌も温泉療養で無事に直ったようだ。日本の温泉は、世界に誇れるオアシスだ。

April 23, 2006 11:02 AM