2006年04月22日
横浜を支える女性広報:山内崇章
プロ野球、横浜のチーム付広報になって5カ月。試合中にベンチでメモを取る女性の姿がテレビでも映され、最近はファンの間でも話題の人だ。八木直子さん(36)は、12球団唯一の女性広報。過去に他球団でもあまり例のない女性のベンチ入りを果たしている。
選手と記者の間を慌ただしく走り回るのが八木さんの日課だ。球団が発表したニュースの詳細説明。試合中に選手の談話を記者席まで届ける足取りも軽快だ。当日の紙面についての感想も記者と熱心に語り合う。知る限りのチームの現状を力説することもある。
広報になってからは未知の作業に戸惑いの連続だった。「どうすれば横浜の記事が大きくなりますか」。若い記者にも謙虚に質問する姿が印象的だ。最近はこんな発言も。「あとは先発投手の調子が戻れば。中継ぎも打線も結果を出している。今は我慢。必ず巻き返すときが来ます」。牛島監督の心境を代弁するコメントも自然に口をつく。
野球経験はなく、学生時代に野球部のマネジャーをしていたわけでもない。短大卒業後、大手都市銀行に就職。窓口業務や定期預金、為替を担当するOLだった。入社3年目の冬休み、学生時代から好きだったNBA観戦のため米国を旅行。サクラメントのアリーナで見たささいな光景が、転職のきっかけとなった。
熱戦の最中、地元チームを応援する少年と、ビジターファンのサラリーマン2人が、前後の席でやじの応酬を繰り広げていた。最後はポップコーンまで投げ合う始末。「大の大人が子供相手にエキサイトする姿、地元チームが勝利した後に、3人でハグし合う姿が忘れられない」。純粋にスポーツを愛する人の心に感動した。満員のアリーナを見回し、自分もスポーツを通して人を喜ばせる仕事がしたいと思い立った。
帰国後、4年勤めた銀行を退社。米国の大学に留学し、スポーツ経営学の学位を3年半で取得した。学生時代を過ごした横浜のプロスポーツ組織、ベイスターズで夢の1歩を踏み出したのは29歳の時。入社後は経理、営業を担当し集客戦略のノウハウを学んだ。昨年11月に現場への異動が決まり、ファンと選手の間でスポーツの醍醐味(だいごみ)を伝える念願の任務に就いた。
選手、チームスタッフは、彼女を同志として分け隔てなく接する。「男社会で大変だろうってよく言われますがあまりそう思ったことはありません。困ったのはビジターで行く球場には着替え場所がないことぐらい。トイレで十分です」。
開幕前日、本当の意味でチームの一員になったことを実感した。WBC帰りの多村に取材が殺到し、牛島監督から「ヒトシを頼む」と指示された。主力のケアを任され意気に感じた。広報として可能な限り露出を試みつつ、練習に集中できる環境も考慮。報道陣に協力を求め臨機応変に取り仕切った。「八木、ありがとう」。監督からのねぎらいの言葉はずっと胸にしまっておきたいという。「今の夢は横浜スタジアムを満員で埋めること。敵、味方のファン同士がハグするシーンを横浜でも見たい」。
プロ野球選手の一挙手一投足には夢がある。支える人も夢を持ち続けることが大切だ。
April 22, 2006 01:16 PM
