2006年04月16日
庶民感覚なしの増税:桐越聡
消費税率は8%どころか、10%以上に引き上げる必要がある-。政府税制調査会の石弘光会長が今週、そんな発言をした。過去には「低価格競争がビールの味を忘れさせ、酒文化を損なっている」と、発泡酒より税率が低い「第3のビール」の出現を批判したり「サラリーマンに頑張ってもらうしかない」と、給与所得控除の縮小などの方向を打ち出した一橋大の前学長が、またまた庶民の感情を刺激してくれた。
今年から所得税や住民税の負担が増えている。にもかかわらず消費税が上がるのは正直、受け入れたくない。それでも国の借金を減らすためにはそれしか方法がないのなら、やむを得ない。政府から分かりやすい説明があって「政府はこんなに頑張ったのか」と、素直に認められるようなら賛成できるかもしれないと思っている。
しかし、今の政府は「さまざまなお金を節約し尽くした。だから、あとは消費税アップしかない」と胸を張って言い切れるだろうか。今国会の行政改革推進法案の議論などを見ていて、そんな節約の〝形跡〟が見受けられないと感じるのが、相次いで表面化している各省庁の随意契約の問題だ。
原則は一般競争入札だと義務付けられているにもかかわらず、随意契約はなくならない。それどころか、各省庁がそれぞれ所管する独立行政法人や公益法人と結んだ随意契約の総額は何と年間5376億円! しかも、木曜日の衆院行政改革特別委員会を傍聴していると、500万円以上の随意契約の場合には環境省、財務省、厚生労働省や農水省では契約した1社からしか見積もりを取っていない、というではないか。
こんなことは一般の会社では許されないだろう。何かを買ったり、あるいは業務を委託するとき、幾つかの業者から見積もりを出してもらって、いろいろと吟味するのが普通のやり方ではないか。「あなたに任せますから見積もりはいりません」という言い分が通用するなんて、各省庁は庶民の感覚から懸け離れたお金の使い方をしているとしか、言いようがない。
随意契約の問題が指摘され始めたのは昨日や今日ではない。なのに、こんなよく分からないやり方がまかり通っている。小泉首相は「正すべきは正すべき」と、随意契約の見直しが必要だと強調しているが、郵政民営化の議論と比較して何となく迫力が足りない。「随意契約を続けていて、それでも税金の無駄遣いはしていないと言い切れますか?」。各省庁に問いただしたい気分になる。
随意契約をやめられないのは、長年問題視されている国家公務員の天下り問題と深くかかわっているからではないのか-。随意契約問題は“氷山の一角”で税金の無駄遣いはまだまだあるのではないか-。野党の追及をのらりくらりとかわす政府の姿勢を見ていると、そう勘ぐりたくもなる。だから、消費税アップは認めたくない。
冒頭の石会長の発言について自民党幹部は「衆院千葉7区補選の告示日に増税の話をしなくてもいいじゃないか」と批判したという。選挙を控えていない時期の発言ならば、批判しないと暗に言いたいのだろうか。
April 16, 2006 10:57 AM
