記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年04月15日

清原も参った仙台の魔物:松井清員

 寒いなんてもんじゃない。取材でグラウンドに立つと、脳天を突き刺すような痛みが走った。仙台で行われた3月29日の楽天-オリックス戦。激しい横殴りの雪で8分間も遅れたプレーボール時の気温は、1度しかなかった。まるで凍(い)てつく真冬のスキー場にいる気分。午後8時には氷点下寸前、最低気温0・2度を記録した。そんな過酷条件の屋外ナイターで、9回までプレーし続けた両軍ナインが気の毒でならなかった。

 多くの選手がポケットにカイロを忍ばせたが、オリックス先発吉井は「全然効かなかった」と苦笑した。受けた日高も「指先がシビれて感覚がなかった」と振り返る。だが笑い話で済めばまだいい。左太もも裏を痛めて7試合の欠場に追い込まれた清原は「仙台の寒さが効いた」と明かす。3連戦の平均気温は2度前後。その中で清原は12打席5出塁とハッスルした。極寒状態で収縮していた筋肉に、過度の負担が掛かっていたのだ。そして中村までもが右太もも痛を再発。オリックスにとっては今なお恨めしき仙台になっている。

 野球規則に降雨中止や降雪中止の条項はあっても「寒さで中止」の文言はない。どんなに寒くても、雪や雨や台風が来ない限り、試合は行われる。だがどう考えても今年3月末の仙台は、屋外のナイターで野球をする環境にはなかった。楽天は29日の試合でプロとして恥ずかしい6失策を犯したが、寒さで集中力を欠いたのも要因だろう。だが楽天球団貸し出しの毛布にくるまり、客席で凍えるしかなかったファンはもっとつらかったはずだ。選手はベストパフォーマンスを見せるどころか大けがの危険性もはらみ、ファンも修行のような観戦。これでは何のための興行か分からない。

 公式戦日程はセ・パ両リーグ連盟、各球団営業部などの話し合いで組まれるが、この現実をしっかり見て欲しい。私は仙台での3月、4月のナイター開催は今季限りにすべきだと思っている。楽天関係者は「球団創設1年目の昨年は雪もなかったし、ここまで寒くなかった」と説明するが、来年も悪条件が重なる可能性は十分ある。気候的にも春先の仙台は不安定な天候が多い。だからその時期に仙台で開催するのは、まだ多少は暖かいデーゲーム限定。ナイター開催は少なくとも5月のゴールデンウイーク明けまで待ってはどうだろう。

 当然「楽天の我慢」と「他球団の協力」が必要になる。営業的にデーゲームとなれば週末限定。だが開幕直後、楽天ばかりがおいしいところを持って行くわけにもいくまい。つまり春先は仙台でほとんど試合を行わず、おのずと楽天の主戦場はビジターとなる。だがその分暖かくなる初夏以降、仙台での試合を増やす。日程はかなりいびつなものになるだろう。選手心理やファン心理を考えた時、そうした「アンバランスさ」が、むしろ喜ばれるのではないだろうか。

 オリックスの後、3月31日から仙台で楽天3連戦を戦ったソフトバンクの王監督は風邪をひいてしまったという。楽天の野村監督ですら「仙台は寒い。5月でも寒いか、下手すりゃ6月でも寒い。こりゃ屋根付けなきゃいかんな」とぼやいている。今年の日程はもうどうしようもない。だが真剣に球界改革を考えるなら、絶対に生かすべき今年の教訓だと思う。

April 15, 2006 12:36 PM