記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年03月28日

Jの理想支える情熱:荻島弘一

 懐かしい名前だった。高橋高、42歳。アマチュアサッカーの国内リーグ最高峰、JFLを戦う栃木SCの監督だ。80年代の国士大黄金時代にDFとして活躍し、85年の神戸ユニバーシアードで日本代表も務めた。国士大らしい屈強なストッパーで、名前の通り高さもあった。日本国籍取得前のフランス人ミシェルとセンターバックでコンビを組み、ボランチには1学年下の柱谷哲二がいた。守備は大学NO・1と言われた。

 体格の良さは相変わらず。人柄の良さも変わっていなかった。19日のJFL開幕戦のFC琉球戦では、試合中に大声で選手に指示を出し、逆転勝ちすると大きな体を折り曲げるようにスタンドに向かって何度も頭を下げた。そんな姿を見ながら、20年も前に西が丘サッカー場で聞いた「上から読んでもタカハシ、タカシ~下から読んでもタカハシ、タカシ~」というサッカー部員の大合唱を思い出した。

 「今なら、迷わずJリーグに行きますよ」と高橋監督は言った。しかし、当時はプロリーグなど夢だった時代。日本リーグに進む仲間たちと別れ、故郷の栃木に帰って教員になった。栃木教員でプレーを続け、関東リーグでも活躍した。その間にJリーグが誕生。かつての仲間はJリーガーとなり、遠い存在になった。

 選手からコーチ、監督、栃木教員が栃木SCと名前を変えてもチーム一筋だった。宇都宮市立鬼怒中で保健体育を教えながら、夜はチームを指導した。そして今年、大きな変化が訪れた。正式にチームがJリーグを目指すことが決まったのだ。「うれしいですよ。Jリーグという目標ができた。夢でしたから」。サッカー選手としては果たせなかったJリーグという夢を、指導者として果たすチャンスに恵まれた。

 スタジアムの問題など、まだまだクリアしなければならないハードルは多い。しかし、高橋監督の情熱に引っ張られるように、選手たちも熱い思いでJリーグを目指している。26日には三菱水島FCに勝って開幕2連勝。「はっきりとした目標が、チームを強くしている」と監督は話した。

 今、Jリーグは1部(J1)2部(J2)を合わせて31のクラブが活動している。JFLでは栃木SCやFC琉球など5チームが加盟準備を進め、26日行われた日本サッカー協会の評議委員会では9つの県がJリーグ入りの準備をしていることが分かった。「Jクラブを持とう」という考えは、日本中に広まってきている。

 高橋監督のように、情熱を持ってJリーグを目指している人は、日本中にいるはずだ。国士大サッカー部で高橋監督とともに活躍した宮沢ミシェル氏は、Jリーグを目指す北信越リーグのツェーゲン金沢のスーパーバイザーも務める。「高橋も大変そうですね。完全にボランティアだし。高橋にしても、ツェーゲンにしても、頑張っているのを見ていると、応援したくなります」という。

 Jリーグには「100クラブ構想」がある。非現実的な話だと思っていたが、高橋監督のような人の情熱に支えられて、それが現実になるのも、そう遠いことではないかもしれない。

March 28, 2006 11:40 AM