2006年03月27日
証人喚問ありきに?:桐越聡
証人喚問しか方法はないのだろうか。
1カ月以上続いている「送金指示」メール問題。24日の衆院懲罰委員会では永田寿康議員が情報仲介者の名前を明かし、焦点は、メールを提供したとされる男性の証人喚問へと移った。なぜ「偽物」を渡したのか。だまそうとする意図があったのか。もしかしたら誰かに依頼されたのか。証人喚問の内容次第では、真相が解明されることになるかもしれない。
渦中の男性を証人喚問をする、と決めたのは懲罰委員会の理事会。その言い分はこうだ。永田氏と情報仲介者、どちらの言っていることが正しいのか分からないことには、永田氏の処分は決められない。だから男性には国会に出て証言してもらわないといけない。参考人招致ではいいかげんなことを言われてうやむやになるかもしれないから、証人喚問しかない。
これはもっともらしく聞こえるかもしれないが、後から理屈が付いてきただけ。取材を通じて、この懲罰委員会には以前から証人喚問ありきのような雰囲気があった、と感じている。
その証拠に懲罰委員会の理事らはキッパリと言っている。「この際だから、いいかげんな情報持ち込んで、面白おかしく陰でニヤニヤしているような人をほっておいていいのか」。「永田氏はだまされたと言っているのだから、だました情報仲介者が主役だ」と。永田氏の処分を決めるために開かれた委員会が、いつの間にか永田氏だけを裁く場所でなくなった。こんなことしたら証人喚問する-。報復とは言わないが、見せしめにする、というような発想が次第に見え隠れするようになっていた。
このようなスタンスは、不正や巨悪を暴いてもらいたいから知っている情報を提供するというような、勇気ある行動に出ようとする人を委縮させることにはならないか。4月1日には犯罪や違法行為の内部告発者を保護する公益通報者保護法が施行される。そんな時代の流れにも、逆行しているような気がしてしまう。
永田氏は「だまされた」のだから「被害者」だと主張する。果たしてそうか。日刊スポーツにもさまざまな情報が寄せられる。中には怪しいと感じる情報もある。しかし「裏」が取れなければ記事にはならないし、裏付けのない情報に基づいて人を傷付けるような記事が紙面に掲載されることはまずない。そんなイロハのイを怠るようなことをして、「生命線」と話していた「情報源の秘匿」をあっさりと覆すのは、筋が通らない。
情報を提供したとされる男性に非がないとは思っていない。しかし、見方を変えれば、突然、国民の視線にさらされることになった情報提供者は、ある意味では「被害者」だ。国会での発言は、院外で責任を問われることはない、という特権がある国会議員の不用意な行動によって、立場の弱い民間人が集中砲火を浴びるのはいかがなものか。こんな民間人いじめのようなことがまかり通るなら、情報は提供されにくくなり、さまざま疑惑の追及は難しくなってくるのではないか。
March 27, 2006 01:08 PM
