記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年03月07日

落ちたまま終わるな:桐越聡

 前代未聞のドタバタ劇が繰り広げられた「送金指示メール」問題は、ようやく収束へと向かった。

 先週前半のある日、永田議員が入院した都内の病院に張り込んだ。対応策を協議するため、民主党の幹部が病院に駆け付けるかもしれない。永田議員が急きょ退院して、何らかの行動に出るかもしれない。そんな読みから、寒風吹き付ける病院の玄関前で半日待ったが、表面上の動きはなく、空振りに終わった。消灯時間が過ぎたころ病院を後にして、近くの食堂でラーメンをすすりながら思った。「入院が長引くほど、騒ぎは拡大するんじゃないのかなあ」と。

 案の定、民主党国会議員のブログには「国民をなめるな」「失望した」「愛想が尽きた」「2度と投票しない」「支持をやめる」「もう何も期待しない」「税金を茶番劇に使うな」「解党しろ」…。さまざまな批判が日増しに増えていった。永田議員はもちろん、謝罪が遅れた民主党に対する国民の信頼は「地に落ちた」といっても過言ではないのかもしれない。

 武部自民党幹事長の二男の周辺だけでなく、ある意味ではメールの送信者とされた堀江容疑者も、永田議員の質問によって傷ついた。発言が撤回されたからといって、傷はすぐに癒えるわけではない。謝罪がなされても、当事者が「ハイ分かりました」と、簡単に受け入れられるものではない。このような過ちはどうして起きるのか。繰り返されてはならない。そう思った人は少なくないだろう。

 しかし、自滅した野党第1党が「地に落ちた」ままでいいのだろうか。06年度の政府予算案が衆院を通過した先週の木曜日。傍聴した衆院の予算委員会と本会議で、民主党議員が謝罪を繰り返すのを見ていて、そんな思いがした。

 庶民の生活に直結する米国産輸入牛肉問題や耐震強度偽装問題は、このまま尻すぼみになってはいけない。官僚の天下り問題と絡んで根深いものがある防衛施設庁の談合事件や、ライブドア事件にかかわる疑惑や問題が、徹底追及されないままでいいはずがない。「対案路線」を強調している今の民主党は単なる疑惑の追及だけでなく、政府ともっと政策論戦を繰り広げてもいいのではないか。

 民主党はとかく「ばらばら」とか「寄せ集め」などとやゆされてきた。今回もまた、野田国対委員長の後任として打診を受けた議員が次々と辞退するなど、政党としてもろさのようなものが見え隠れする。そんな政党にどれほどの力があるのかは分からないが、「送金指示メール」問題を引きずったまま委縮して、政府や巨大与党の“独走”を許すことがあっていいのか。むしろ“独走”のじゃまをする責任が増しているのではないか。

 謝罪の記者会見を終えた永田議員は、衆参両院の民主党議員を前に言った。「民主党を愛しています。お前になんか言われたくないと思われるかも知れませんが、民主党がよくならないと、民主党が力を付けないと、日本の政治はよくならないと思います」。この“メッセージ”は民主党議員の胸にどう響いているのだろうか。「お前が何をいまさら」と、片付けられてしまっているのだろうか。

March 7, 2006 12:22 PM