2006年03月06日
伊勢エビにならんと:松井清員
オリックス高知キャンプ中、清原と佐々木主浩氏(日刊スポーツ評論家)の対談に同席した。目の前には土佐の海で捕れたばかりの魚介類の舟盛り。清原はその中心に鎮座する伊勢エビを指して言った。
清原「やっぱり伊勢エビは目立つなあ。どうせならこの伊勢エビにならんとな。下の方にあるキュウリになっても仕方ない」。
清原は舟盛りを今のプロ野球界に見立てていた。伊勢エビはスーパースターでツマのキュウリは他の選手。大皿に乗るだけでもたいへんな世界だが、プロとして、同じやるなら一流を目指さないと意味がないという清原流の例えだった。
絶妙の言い回しに、プロ野球界から「伊勢エビ」が減ったことを痛感した。スポーツ紙的にいえば1面を張れる個性的な選手、華のある選手だ。一流選手のメジャー流出もあるが、取材していてもドキドキ、ワクワク感に巡り合うことが少なくなってきた。技術のある選手はいくらでもいる。何かが物足りない。その何かとは。清原を取材していて感じたのは「ショーマンシップ」の有無だった。
もし清原が単に打つだけの選手だったら、ここまで人気が出ただろうか。タイトルを取ってきたわけじゃない。同じように2000本安打しても、記憶に残らない選手もいる。清原にあるもの…それは豪快なホームランだけでなく、ファンを魅了しようとする強烈なプロ意識があった。巨人時代の悔しさをピアスに込めた思い、ヒーローインタビューでの涙…。何よりファンに訴えかけていく、熱くてウイットに富んだ自分の言葉がある。
清原「プロやから勝つのは大前提や。でも勝ち方とか負け方いうもんがある。そういうことをもっと意識して、ホームランを打つとかそれだけでないことをやっていかなあかんと思う」。
プレーだけでファンを引き付けられるのは、イチローぐらいだろうか。今の時代“おれの無言の素晴らしいプレーを見に来い”だけでは、ファンも高い入場料を払わない。プロは「魅せて」ナンボ。ファンの心をつかんでナンボ。そのためには選手自身がショーマンシップを示し、ファンを取り込んでいく必要がある。「最高です。ご声援よろしくお願いします」の味気ないヒーローインタビューはもうたくさん。その点で清原は、あの手この手のパフォーマンスで沸かせる日本ハムの新庄について「最高のプロフェッショナルを持った男や」と称賛した。
清原「最近パンチの効いたヤツが減ってる。ホンマにサイン欲しいと思える選手がどれだけいるか。キャラ、人間性やね。テレビ中継でもそいつの打席でチャンネル回されたらアカン。野球嫌いの人にもパッと止めさせるぐらいでないと」。
野球界を見渡すと、選手の没個性、サラリーマン化が進んでいるような気がしてならない。チームの勝利や自分の成績が最優先で、ファンに魅せるという大事な視点が置き去りにされているのではないか。ホームランバッターやタイトルホルダーだけが「伊勢エビ」になれるわけではない。もちろんプロである以上、誰にもその可能性はある。ファンから愛される「伊勢エビ」になれるかどうかは、個人の意識の持ち方1つだと思う。
March 6, 2006 10:17 AM
