2006年03月04日
城島救う日本人先生:浜崎孝宏
2年ぶりに戻ってきたアリゾナの地。灼熱(しゃくねつ)の太陽を自分の夢とだぶらせて、まぶしそうにしていた。
04年の春季キャンプ。コロラド・ロッキーズのマイナー選手として、メジャー入りを狙っていた坂本充氏(25)は同州トゥーソンでキャンプ参加していた。マリナーズ城島の取材で、同地に近いピオリアに滞在中の私は、坂本氏と2年ぶりに再会した。昨年末に現役を引退し、今回は城島の専属通訳としてサポートしている。
突然の出来事だった。05年のロ軍春季キャンプに備えて渡航準備をしていた坂本氏にビザは下りなかった。マイナーでの活躍が認められなかったのだ。球団とは契約を済ませていたが、ビザが下りず、メジャーへの夢はあっさり消えた。
同氏は02年6月の米ドラフトでロ軍から日本人初となる24巡目指名(全体711番目)を受けた。身長188センチ、体重92キロの日本人離れした大柄な体で50メートル走5秒6の快足外野手だった。3Aまで上がった時期もあったがあと1歩だった。
ロ軍1A(ダスト・デビルズ)時代は、国籍の違う選手と3人で家賃月8万円の部屋を借りて共同生活も経験した。1つのベッドを誰が使うかでけんかになることもあった。1Aでの年収は約60万円だった。坂本氏は自分の果たせなかったメジャーでの成功を城島に託す。「日本で新外国人選手が1年で結果を出さないと解雇される。こちらでは当然ですが、日本人は外国人だから見る目は厳しい。ジョーさんには成功してほしいし、1年目が大事です。生活面で野球以外の神経を使わせないようにしたい」。
最近では日本で成功した後、メジャー入りする日本人選手が多くなってきたが、坂本氏はマイナーの本当の姿を知る1人だ。「坂本みたいにアメリカの大学から、英語を覚えた人がいい」。城島は「英語の日本人先生」から聞けるマイナー選手の貴重な苦労話に耳を傾けていることだろう。坂本氏は、生活面だけではなくキャンプ中はほぼ毎日、球場に現れ、城島の目の届かない投手や打者のメモを取る。頼まれたわけではないが、城島から意見を求められれば、気付いた点を報告できるようバックアップ態勢を取っている。
キャンプ中、城島は球場近くのアパートで、坂本氏と藤田専属トレーナーとの男3人暮らし。週3回、球団のクラブハウス内で英会話授業を終え、アパートに戻れば、坂本氏のワンポイント英語レッスンをこなしている。城島のコミュニケーション能力は急速に上達しており、約1週間前からブルペン投球後の投手と球団通訳を交えず、何とか言葉を交わしているほどだ。
日本の球界でも、ここ10年ほどで“身銭”を切って専属トレーナーと契約する選手が増えた。最高のパフォーマンスを披露するためには自分に「先行投資」して、すべての環境整備をしなくてはいけないようだ。城島の英会話能力の上達ぶりを間近に見せられると、普段の仕事だけで終わっている自分にあらためて気付づかされた。
March 4, 2006 11:19 AM
