記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年03月09日

熱戦に一役30年発言:千葉修宏

 野球の国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」が盛り上がりを見せています(よね?)。こちら米国では、スポーツ専門放送局ESPNが、なんとアジアラウンドからWBC全試合を中継。日本戦もしっかりと放送されていました。

 そんな中、大会前から面白い(と言って良いと思うのですが)ことがありました。発端は日本代表イチロー選手がアジアラウンドを前にして発した「向こう30年間、日本には勝てないなと(相手に)思わせるような勝ち方をしたいですね」との言葉。イチロー選手は「特定の国を狙ったものではない」と説明しているようですが、これに韓国メディアが反応しました。

 韓国の主要新聞は「野球は個人スポーツではない。イチローが全打席でホームランを打ったからといって、いつも勝てるものではない。うちのチームをなめているようだが、必ず勝ってみせる」「プロ入団後、5回代表チームに選ばれた。しかし、00年シドニー五輪や02年釜山アジア競技大会など、すべての大会で日本に負けたことは1度もなかった」「日本の野球が一枚上だって? とんでもない。同じレベルだ。いつでも勝てるチームだ」などの代表選手のコメントを紹介。舌戦に拍車を掛けてきました。

 そして日本戦に勝利すると「朴賛浩(パク・チャンホ)、『妄言』イチローに完勝」(朝鮮日報)などのタイトルで勝利を報道しました。まだ2次リーグ以降の試合が残っていますが、現時点では韓国代表選手の言葉が正しかったということが証明されたわけです。

 僕は、日韓の過去の歴史を頭に入れた上で、これらの発言の応酬が良いか、悪いかということには、実はあまり興味がありません。それよりも、ヒートアップした代表選手たちが意地をぶつけ合って素晴らしい試合をし、結果的に世界的に見てもレベルの高い野球を披露してくれたことに意味があると思うのです。

 僕は昨年行われた「アジアシリーズ」を取材しました。そこで感じたのは優勝した日本代表・ロッテと、他の韓国、台湾、中国代表チームとの力の差でした。この差を埋めない限り、大会の盛り上がりや、今後の成功はあり得ないと思いました。WBCについても同様です。各国の力の差がない方が試合はスリリングになり、当然、盛り上がります。その意味で、闘争心をあおるような言葉の応酬は、歓迎しても良いのではないでしょうか。

 もちろん国同士が戦争をしたり、両国の国民がいがみ合ったりしてはいけません。でもスポーツ選手が自らの力を証明するために、時に子供のように相手をけなしたり、自らの優位を唱えるのは、そんなに悪いことには思えません。むしろ、人間的で魅力的に見えたりもします。本人としては本意ではないのかもしれませんが、大会前のイチロー選手の「30年発言」が、WBCアジアラウンドの盛り上がりにつながったことは言うまでもありません。

March 9, 2006 10:44 AM