2006年02月27日
異国というストレス:千葉修宏
1人の人間として、そして子供を持つ親として、耐え難い事件が先日、起きました。滋賀・長浜市で幼稚園児2人が刺殺され、同級生の母親が逮捕された事件です。
中国・黒竜江省出身の容疑者は、99年に来日。長女が幼稚園で仲間外れにされていると考え、犯行に及んだとされています。また容疑者自身が周囲のお母さんから相手にされていないと一方的に思い込み、孤立感を深めたことも事件の背景にあるそうです。
かけがえのない小さな2つの命を簡単に奪い去ってしまう短絡性もさることながら、自分の長女が助手席に乗っていたとされる車の中で人を殺すという異常性は、とても人の親とは思えません。ですが、この事件は海外で生活することの多い僕のような人間にとって、ある意味、人ごとでないのもまた事実です。
この容疑者は警察の調べに対し、「日本になじめない」という供述をしているそうです。文化の違いからくるストレスが少しずつ蓄積していったことも、犯人の異常性を引き起こす要因になったのではないでしょうか。とはいえ、なじめないから帰国する…という考えは、なかなか現実的ではありません。結婚をし、子供を持ち、日本に生活基盤を築いた以上、なじめないから「はい、さよなら」とはいかないからです。
僕は今、大リーグ・ヤンキースの取材のために米フロリダ州に滞在しています。米国にも日本人をはじめ、外国人はたくさんいます。僕は小さいころからスポーツや音楽などアメリカ文化にあこがれて育ってきた「アメリカかぶれ」なのでそれほどではありませんが、異国で暮らす多くの人は、多少なりともストレスを感じた経験があるのではないでしょうか。
昨年、米西海岸のある名門球団に取材を申し込んだ時のことです。Eメールで申請したのですが、球場の受付に行くと「ウチはEメールでの申請は受け付けていない。ファクスだけだ」の1点ばり。取材パスを出してくれませんでした。対応した男性に「特例でパスが出ないか、広報部に聞いてください」と言うと、「自分で電話しろ」と番号の書かれた紙切れを投げてよこされました。
さらに球場のロビーで東京の上司に事情を説明する電話をかけていると「うるさいから出て行け」と、追い出される始末。幸い、見かねた別の球団職員の方が、「オレが何とかしてやる」と、僕の名刺を持って球団上層部に直談判してくれて、取材パスが出ました。このような必死のやりとりを母国語ではない英語でやっていると、ストレスからどっと疲れが出ます。
今後も日本にやってくる外国人はどんどん増えるでしょう。もちろん今回の滋賀の事件の原因を周囲の環境にすり替えるようなことがあってはいけません。どんな理由であれ、人の命を奪って良いということにはならないからです。ですが悲劇を2度と繰り返さないためにも、僕ら日本人は、外国人が不安やストレスを感じずに暮らしていけるように、常に精神的ケアを考えていく必要があります。それが事件の再発防止につながるのではないでしょうか。
February 27, 2006 11:39 AM
