2006年02月25日
おかしい地検の対応:桐越聡
ライブドア前社長堀江貴文容疑者が武部勤自民党幹事長の周辺へ資金提供したとされる問題。疑惑があるのなら真相が解明されないまま終わってほしくない。メールの信ぴょう性を立証できない民主党永田寿康議員が辞職の意向を固めたと聞き、そんな思いがした。
問題の本筋からはそれるが、衆院予算委員会でこの問題が初めて取り上げられて以降、引っ掛かっていることがある。永田議員が指摘した数時間後、東京地検の次席検事が「メールの存在や指摘された事実関係は、全く把握していない」というコメントを発表したことだ。
ライブドア事件は捜査中なのに押収した資料のことをしゃべっていいのか。自民党が否定するのは分かるが、メールのコピーが本物かも分からない時点で、どうして東京地検が否定しなければならなかったのか。このようなコメントを出すのは異例だと聞いて、ますます分からなくなった。
翌日、衆院予算委員会を傍聴していると、民主党の原口一博議員が法務省に食って掛かっていた。
原口議員「過去に捜査中の個別の事案で、押収した証拠について答えたことがあるのか」。
法務省刑事局長「捜査機関の具体的な活動内容を明らかにすることは通常、差し控えるべきだと考えている。しかし、報道機関などの関心が高く、捜査への支障がもたらされる恐れも特段ないと認められたことから公表した」。
過去、法務省は国会などで「捜査中のことには答えられない」としていた。国民や報道機関の関心が高いのはライブドア事件に限ったことではない。なのに今回だけは、あの堀江容疑者がかかわったとされる問題だから、として捜査中のことを公にしている。何だか腑(ふ)に落ちない。
専門家の意見を拝聴したくて元最高検検事の土本武司さんに電話してみた。
土本さん「次席検事は不用意だったと思います。捜査中はイエスとも、ノーとも答えないのが妥当です。“霧のロンドン”は、徐々に霧がはれてロンドン塔やテムズ川が見えてくるように、捜査も実態は徐々に浮き彫りになるもの。霧が一部しかはれていないのに公表しては、捜査や公判に悪影響を与えることになります。捜査の本質である密行性に照らして、コメントするのは控えるべき。報道機関の関心が高いからと、事件を区別するのも好ましくない」。
法務省は今後、ライブドア事件と同じぐらい注目される事件の場合、どのように対応するのだろうか。今回は関心が高いからと発表し、次回以降は「捜査中のことは…」と以前の対応に戻すのは無理がある。そもそも、起訴前に捜査にかかわることが公表されることがおかしい。今回が“あしき前例”になったり、将来、法務省幹部が「あのときは…」と、苦しい“言い訳”を連発するようなことにならなければいいのだが…。
渦中の堀江容疑者はときに社会の反発を浴びながら巨大な“台風”のように、既成概念や時代の閉塞(へいそく)感を打破した。今回、東京地検も、ある意味ではその“台風”に巻き込まれ、開けてはならない扉をとっさに開けてしまったのではないか-。そんな気がしている。
February 25, 2006 12:17 PM
