記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年01月08日

プロの技術を間近で:千葉修宏

 今オフからプロ野球選手が母校で練習することが解禁になりました。昨年12月には西武松坂投手が横浜高で練習し、今年はなんとマリナーズ・イチロー選手が母校・愛工大名電高で始動。横浜三浦投手も奈良・高田商で自主トレを始めました。かつてのプロと高校野球界との関係からすれば、大きな前進といえるかもしれません。

 これは昨年2月に学生野球憲章が改正されたことで可能になりました。期間はシーズンオフ(12月1日~1月31日)で、母校に限って現役プロ選手と高校生との合同練習が可能となりました。以前は接触も一切禁じられていましたが、キャッチボールをすることも許可されました。ただし技術指導は認められていないということです。

 ただ、普通に考えて「なぜ合同練習がオーケーなのに、技術指導はダメなのか」とか、「なぜ母校にしか行ってはいけないのか」など、疑問点が多いのも事実。母校で練習するのに申請が必要というのも奇妙な話です。実際、プロ選手たちからも「合同練習」と「技術指導」の微妙な線引きに戸惑う姿などが見受けられたようです。現時点ではプロ、アマの垣根を越えた大きな1歩ですが、これを足掛かりに、もっと抜本的な関係改善に取り組んでいかなければいけないのは明白でしょう。

 プロ、アマの深い溝ができてしまったのは61年のこと。中日が社会人側との協約を破り、日本生命の柳川福三外野手とシーズン中に契約。この「柳川事件」で、社会人協会はプロ退団者を一切受け入れないことを決定しました。これがプロ、アマ間に大きなしこりを残すことになってしまいました。

 でも現在、プロ選手と高校や大学の野球部員が接触すると、例えばどういう問題が起きるというのでしょうか。仮にプロ選手が、高校生を自らのチームへ入団させるために勧誘したり、無用に食事などに誘ったりしたとします。その場合、その個人を罰するルールを作るべきで、そういう可能性があるから指導することを認めないというのは、間違いではないでしょうか。またPL学園高や横浜高などプロを多く輩出している学校に“コーチ”が偏ってしまうというのであれば、「母校に限って」という部分をなくせばいい。サッカーではユースチームの選手がトップチームの練習に参加するのは当たり前。若い世代がトッププロに学ぶことが、技術向上につながっているのは明らかです。

 僕は今、ヤンキース松井選手の故郷、石川県に取材に来ています。松井選手が毎年地元で行っている「新年の集い」では、集まった子供たちと質疑応答やゲームなどで松井選手が触れ合います。その時、子供たちのとびきりの笑顔を何度も見かけました。

 やっぱり野球選手を間近で見るということは、子供たちにとっては本当にうれしいことなのです(もちろん大人にとってもそうですが)。そしてそんな選手たちから、野球の技術を指導してもらえたら…。第2の松井、第2のイチローが続々登場することだって夢ではないかもしれません。

January 8, 2006 11:38 AM