記者コラム「見た 聞いた 思った」

2006年01月06日

あいつらと呼ぶ議員:桐越聡

 民放テレビ局の深夜番組を見ていて、あ然とした。

 ある国会議員が「小泉首相の退陣後には消費税10%に引き上げる」と主張していた。消費税を上げてほしくないが、その理由が聞きたいと見続けていると、国会議員はこんな言葉を口にした。「あいつらから取ればいいんです」。

 お笑いタレントとやりとりした本人の説明によると「あいつら」とは年金を受け取る高齢者なのだという。高齢者だけから厚く税金を取るという主張はもちろん首をかしげるが、高齢者を「あいつら」と呼ぶこと自体がよく分からない。「とりあえず、『あいつら』に負担させておけばいいんだ」というようなお偉方の議論が透けて見えるような気がして、すごく嫌な気分になった。

 今年から所得税と住民税の定率減税が廃止されることが決まっている。サラリーマンは今月分の給与から所得税の定率減税の半減を実感するし、6月には住民税の減税幅が半分になってしまう。年収700万円の夫婦と子ども2人の世帯だと、社会保険料が上がる分を含めて年間4万3200円の負担増だ。もちろん、納税は国民の義務だから受け入れる。しかし、このまま黙って支払いたくはないから、言わせてもらう。

 国の借金がとんでもない額にまで膨らんだ。今からどんどん返していかないと、遅れたら遅れた分だけとんでもないことになる。借金の返済だけに追われると、例えば子どもや孫の時代には、福祉とか教育にお金が回らなくなるかもしれない。だから今、「痛み」に耐えて借金を返さないといけない。消費税は段階的に15%ぐらいまでは覚悟しないといけないのかもしれない。言い分は分かる。

 しかし、だ。国会議員の増税の議論には「まずは取りやすいところから取ればいいんだ」という場当たり的な発想に凝り固まっているような気がする。毎日飲む「第3のビール」が、5月には350ミリ缶1本当たり3・8円値上がりする。私は吸わないが、7月にはたばこが1本1円程度増税になる。高所得者から税金をたくさん取るような仕組みをつくり直すとか、本来なら、大なたを振るわなければならないところを中途半端なままにしておいて、庶民のささやかな楽しみを奪うような政府・与党のやり方は釈然としない。

 そもそも首が回らなくなるぐらいまで借金を増やして、ここまで放置したのは一体誰だ。歳費、秘書手当とか国会議員1人当たりにかかるお金は年間1億円に近いといわれる。100人減らせば年間100億円の削減になる。新規国債発行額の「30兆円枠」が話題になるぐらいだから焼け石に水程度の額かもしれないが、国民に「痛み」を強いるなら国会議員は自ら率先して定数削減に取り組むべきだ。しかし、議論は進んでいない。削減どころか、年間約2400万円の歳費が「少ない」と主張する人もいるぐらいだ。

 「ポスト小泉」一色に染まりかねない06年。「劇場」だけに躍らされることなく、高齢者を「あいつら」と呼ぶような国会議員の一挙手一投足にも目を凝らしたい。メディアの端くれにいる者として自戒を込めて、そう思う。

January 6, 2006 09:57 AM