2006年01月05日
武蔵流の「K1愛」:横田和幸
新年あけまして、おめでとうございます。今月で当欄コラムを担当して丸1年を迎え、任期満了に伴い今回が最終回。題材に迷っていたが、大阪が生んだK―1ファイター武蔵(33=正道会館)の「K―1 LOVE」に触れたい。
4日前の大みそかは恒例の格闘技イベント「K―1 Dynamite!!」の取材で、私は大阪ドームにいた。世間の話題は曙とボビー、山本と須藤の試合に集中した。武蔵はボブ・サップと好カードが組まれたが、ともに05年は世界一決定トーナメントで敗れ、事実上は数合わせ。実際にこの試合で勝者のメリットはないし、敗者は商品価値がさらに落ちる。
武蔵は大みそか参戦に消極的だった。いや、嫌がっていたという表現が正確かもしれない。11月のトーナメントで惨敗。1カ月後、相手がサップだからとはいえ、ここで動機付けを見つけられるほど、単純な問題ではない。それでも出場要請を受けたのは、競技人気を広げたい武蔵流の思想。さらに激化するPRIDEやNHK紅白歌合戦との視聴率争いがある。
主催者は今回、カード順を当日発表にしてまで、視聴率で他局に勝つための異常な戦法をとった。武蔵は本来、リング内だけを考えていればいいのに「視聴率も試合の結果も出す。PRIDEの吉田―小川戦に負けない。客の喜ぶ試合がしたい」と断言していた。
当日は全11戦の中で、第6試合。セミでも、その前でもなかった。
ゴングは鳴る。武蔵に熱があった。サップの反則パンチを後頭部に浴び、さらにダウンを喫した。不屈の闘志で立ち上がり、最終3回、左ハイで逆転勝利を呼ぶダウンを奪う。「決め技がない」と非難された男が、3―0の判定で逆転勝利をつかむ。興行開始後、観客が最も沸いた。谷川貞治イベントプロデューサーの「今回のMVPは武蔵」という言葉が、私はうれしかった。まさに有言実行、プロの中のプロだった。
現場での熱とテレビ視聴率は必ずしもイコールではない。現場で見ていて興奮できたのだから、この一戦の視聴率は私にとってはどうでもいい。
武蔵は以前、実家で「ポコ」というヨークシャーテリアを飼っていた。帰宅が深夜になっても、ポコは玄関先で飼い主の武蔵の帰りを待ち続けた。それほど愛情を注いでいた。8年前に愛犬が死んだ時の武蔵の落胆ぶりも聞いた。一方で格闘家という険しい道を歩む姿と私生活のギャップに、魅力を覚えてしまう。
魔裟斗が今回、故障者続出の事情からカード編成に苦慮するK―1のために「K―1愛」という言葉で緊急参戦した。武蔵は口にしなかったが、私が言い換えるなら冒頭の「K―1 LOVE」を背負った。正月は熊本の親せき宅で過ごしている武蔵に、このコラムから激闘をねぎらいたい。今年こそ悲願の「WORLD GP」で世界一を奪ってほしい。この男気があれば。応援しています。
January 5, 2006 11:24 AM
