記者コラム「見た 聞いた 思った」

2005年12月30日

世界との差「タフ」が鍵:岡本学

 もう10年前になるが、ゴルフ担当をしていた。全英、全米、全米女子オープンなど海外ツアーも取材したが、日本人選手が勝つシーンを目の当たりにすることはできなかった。ラフに行こうが、ティーショットを飛ばしておけばアドバンテージがあり、好スコアが出やすい日本ツアー。それに対して、飛ばしてもフェアウエーにきっちりコントロールできなければスコアメークしづらい米ツアー。すべてが当てはまるわけではないが、日米両ツアーを現場取材し、大まかにそんな印象を持った。日ごろから、どんな環境でもまれているか。1打1打にシビアさを要求される環境に身を置かなければ、世界との差は縮まらない。記者としての実感だった。

 今月3日、イングランドのプレミアリーグを見る機会があった。日本代表MF中田英寿が所属するボルトンとJリーグ名古屋で指揮を執ったことがあるアーセン・ベンゲル監督率いるアーセナルとの一戦。残念ながら、中田英はベンチから外れたが、Jリーグの試合を見慣れている記者には新鮮だった。

 Jリーガーなら倒れてしまいそうな相手のタックルにも、プレミアリーガーたちはひるまず、前へ前へと進んでいく。もちろん、審判にファウルをもらおうとしてオーバーに倒れる、なんてこともない。そんなタフな選手たちを裁く審判も、なるべく反則の笛を吹かずにプレーを続けさせようとする。驚いたのは「反則だな」と思ってみていたシーンから、2プレー後に審判の笛が鳴ったときだった。主審は「アドバンテージ」をとり、反則を受けたチームがボールを奪われるのを待って、ようやく笛を吹いた。その間、ほんの2、3秒だったかもしれないが「そこまで笛を待っていいの?」と正直、思った。選手、そしてチームは、主審の笛が鳴るまで貪欲(どんよく)なまでにゴールへ迫る。一方で、主審はゴールへ向かう選手たちの姿勢を最大限に生かし、引き出すレフェリングに徹する。1プレー1プレーに対するシビアな環境が、プレミアリーグには根付いているような気がした。

 そんな思いを胸にして帰国した直後、来年1月1日から日本サッカー協会審判チーフインストラクターになる小幡真一郎氏(53)の就任会見があった。同氏は「スピーディー」「フェア」「タフ」という3つのキーワードを示して、来季からの改革を宣言。その中で「タフ」なサッカーについて「多少の接触があってもプレーを続けさせる」「ゴールを目指す姿勢を引き出す」「アドバンテージをとって、多くのゴールシーンを生み出させる」など、明確なビジョンを示した。

 厳しい環境の中に日本のサッカーを置かなければ、世界との差は縮まっていかない。「ひ弱」なJリーグが「タフ」なJリーグに変わらない限り、W杯優勝なんて「夢物語」。小幡氏の目指す「タフ」なサッカーで、審判を、そして選手を成長させてもらいたい。

December 30, 2005 11:44 AM